バス運転手不足は「給与改善」だけでは解決しない? 横浜市の引き上げが巻き起こす人材流出、公営vs民間の待遇格差の行方とは

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バス業界の人手不足が深刻化し、待遇改善が進む中、給与引き上げは短期的な人材確保には効果があるものの、業界全体の持続可能性には限界がある。公営・民間の格差是正や効率的な運行システム、職業魅力向上が必要不可欠であり、業界全体の再構築が求められている。

筆者の意見

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 給与改善は短期的には人材確保に一定の効果をもたらすが、それだけでは持続的な解決策にはならない。筆者(宮川紀章、バスライター)は、以下の三つの視点に基づく包括的なアプローチが必要だと考える。

 まず、公営と民間の待遇格差を是正するための制度設計が求められる。公営バスの給与水準が大幅に向上すれば、よりよい待遇を求めて民間事業者から転職するドライバーが増加し、結果的に民間バスの運行に支障をきたす恐れがある。公共交通全体の持続可能性を確保するためには、公営と民間の待遇格差を縮小するための補助金配分や業務委託制度の見直しが必要不可欠である。

 次に、効率的な運行システムの構築が重要だ。人手不足を解消するためには、単に給与を引き上げるのではなく、運行の効率化が求められる。例えば、予約型のオンデマンドバスの導入や路線の統廃合による輸送効率の向上などが考えられる。これにより、限られた人数でもサービス水準を維持することが可能になるだろう。

 最後に、バスドライバーの職業的魅力を向上させる取り組みが必要だ。給与の改善だけでなく、職業そのものの魅力を高めることも重要である。勤務シフトの柔軟化、キャリアパスの整備、労働環境の改善を進めることで、長期的に人材を確保しやすい業界へと変革する必要がある。

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