「陸の孤島」からの脱却!? 和歌山県新宮市は「新宮紀宝道路」開通で“首都”になれるか? 桃鉄の「聖地」を再考する
地域間の移動がますます重要視されるなか、紀伊半島における高速道路網の整備が進んでいる。この新宮紀宝道路の開通は、地域の交通インフラを強化し、物流や観光、医療分野での効率向上に寄与する。これにより、地域経済の活性化や持続可能な発展が期待されている。高速道路網の整備は、地域の競争力を高め、安全性の向上にもつながる重要な施策だといえる。
筆者への反対意見

一方で、このような期待に対して慎重な見方もある。
特に、和歌山県の白浜~新宮間における高速道路の必要性については疑問が呈されている。この地域の移動の少なさは、JR紀勢本線の状況からも明らかだ。白浜駅を過ぎる紀勢本線は「本線」でありながら単線区間であり、運行本数も限られている。
日中には約2時間も列車が来ないことも珍しくなく、特急が1時間に1本という時間帯もある(筆者も周参見駅~太地駅の短距離で泣く泣く特急料金を支払った経験がある)。このような状況下で、多額の費用をかけた高速道路の建設が本当に必要だろうか。
さらに、費用対効果の低さに加えて、開通後には高額なメンテナンスコストが予測される。この地域は2018年の豪雨災害をはじめ、繰り返し自然災害に見舞われている。多雨地域であることに加え、リアス式海岸が続くため土砂災害のリスクも高く、被災時の復旧コストも膨大だ。高速道路による防災対策の迅速化が期待されるが、そのリスクも高いことを忘れてはならない。
また、観光面でも高速道路の開通に対する懸念がある。もともと熊野古道をはじめとする熊野地方は、スローでのんびりとした観光資源を持つ地域である。新宮市は、商店街に昭和の雰囲気が色濃く残り、そうした風情が評価されて観光客が訪れている。
熊野古道伊勢路への来訪者数が2023年中に30万4695人を超えたことを考えると、必ずしも経済活動の活発化による変化がすべて望ましいわけではないのだ。