「陸の孤島」からの脱却!? 和歌山県新宮市は「新宮紀宝道路」開通で“首都”になれるか? 桃鉄の「聖地」を再考する
筆者の意見

このネットワークの完成は、新宮市を含む熊野地方の地位を根本から変えるだろう。それは単なる移動時間の短縮以上の意味を持つ。
まず物流面での革新が期待できる。物流コストの削減や輸送範囲の拡大により、地域の農水産物を大都市圏へより効率的に出荷できるようになる。特に鮮度が重要な水産物にとって、これは大きな強みとなる。多頻度輸送が実現することで、地域産業の競争力向上にもつながるだろう。
さらに、観光や経済全般への質的変化が予想される。例えば三重県熊野市では、高速道路網の整備により中京・関西圏双方から3時間以内でアクセスできる範囲が大幅に広がった。その結果、スポーツ合宿の名所として認知が進み、主要観光施設への入込客数も増加している。今後、高速道路によって観光産業の発展だけでなく、生産性向上や企業誘致が見込まれ、特に熊野地方の中心都市である新宮市では経済活動の活性化が進むと期待されている。商業機能の強化や住宅開発の促進も期待され、若い世代の人口定着にもつながるだろう。
高速道路の効果で特に重要なのは、地域住民の生活範囲の拡大である。東紀州地域では、53%の住民が高速道路開通後に生活に変化があったと答えている。例えば三重県尾鷲市では、運転が楽になり、松坂市や新宮市まで買い物に行く回数が増えている。救急医療に関しても、これまで急勾配やカーブが続く難路だった国道42号線を避けられるようになり、紀勢自動車道や熊野尾鷲道路は
「命の道」
とも呼ばれている。明確なデータはないが、高速道路網が整備されるに従って熊野地方ではコンビニエンスストアなどの店舗も増加している。このように、高速道路網の整備は、この地域を「陸の孤島」から脱却させ、関西・中京圏双方との経済的・社会的なつながりを生み出している。生活環境の向上という点でも、その効果はすでに明らかだといえるだろう。