予測不能なトランプ新政権! バイデン外交との違いが示す米中対立の次なる展開とは

キーワード :
トランプ新政権の発足により、対中政策や貿易規制が再び注目を集めている。バイデン政権が多国間協調を重視したのに対し、トランプ氏は米国単独のディール外交を展開する可能性が高い。特に3700億ドル相当の関税措置など、過去の大胆な政策が今後どのように進化するかが焦点だ。企業は予測困難な規制の中で、生き残りの戦略が問われる局面に直面している。

米国の多国間戦略

ドナルド・トランプ氏(画像:EPA=時事)
ドナルド・トランプ氏(画像:EPA=時事)

 具体的な対中貿易政策には、二国間化と多国間化というふたつの異なる傾向が見られる。トランプ氏は1期目の政権で、膨らむ米国の対中貿易赤字を是正するため、2018年から中国製品に最大25%の関税を段階的に課した。総額は約3700億ドル相当にのぼり、中国も農産物や液化天然ガスなど米国製品に報復関税を課したため、米中間の貿易摩擦は激化した。この政策は、同盟国と協力する形ではなく、米国が単独で中国に対抗するもので、米中貿易対立を二国間の問題として扱う姿勢が鮮明だった。

 一方、バイデン政権は独自に中国への規制を強化しつつも、同盟国を巻き込む形で多国間の枠組みを構築する方針を取った。特に先端半導体をめぐる競争がその典型例だ。バイデン政権は2022年10月、中国がAIやスーパーコンピューターなどで軍事的に活用するリスクを抑えるため、先端半導体や関連技術、専門家の輸出を規制する措置を強化した。しかし、これを米国だけで行うことは不十分と判断し、日本やオランダなど先端半導体製造装置の主要国に協力を要請。2023年1月には、これらの国々と足並みを揃える形で規制強化を進めた。

 日本は2023年7月、14nm幅以下の先端半導体に必要な製造装置など23品目を輸出管理の規制対象に新たに加えた。しかし、バイデン政権は、両国の半導体関連企業が中国に過去に販売した製造装置の修理や予備部品の販売を続けていることなど自らの求める規制水準に至っていないとして、さらなる厳しい規制を要求した。

 そして、バイデン政権は2024年4月、オランダに対して同国の半導体製造装置大手ASMLが中国企業に販売した装置の保守点検や修理サービスを停止するよう要請し、オランダは9月、ASMLの2種類のDUV液浸露光装置に対する輸出許可要件を拡大し、中国向けの輸出規制を強化した。バイデン政権は韓国やドイツなど他の同盟国にも対中輸出規制で同調を呼び掛けており、米中貿易対立の多国間化が鮮明となった。

全てのコメントを見る