鉄道の使命、やはり「利益追求」だけではない? 英国「再国有化」が示す民営化の限界とは
英国の鉄道民営化が失敗に終わり、再び国有化へと進んでいる。30年の民営化を経て、利益が株主に流れ、インフラ投資が遅れた結果、税金投入による矛盾が浮き彫りに。鉄道事業の社会的側面を無視した民間企業の限界が明らかに。
民営化以降英国の鉄道がたどった経緯

ここで、今一度英国国鉄民営化についておさらいしてみよう。
元々英国は、1980年代でもほとんどの企業が公営だった。これは、欧州諸国が第2次世界大戦後に重要な産業の国有化を進めたことに起因している。1981年時点において、
「国内総生産(GDP)の約30%」
を公共部門が占めているぐらいだった。1979年に誕生した保守党のサッチャー政権が、次から次へと民営化を進めていった。ただ、英国国鉄が民営化されたのは、鉄道の民営化に反対していたサッチャー政権ではなく、その後のメージャー政権(保守党)になってからである。
英国国鉄の民営化は、仕組みとして欠陥が多かったといっていい。例えば、民間の列車運行会社は車両や線路設備を持たなかったため、車両リース会社にリース料を、レール・トラック社に使用料を支払って運行する仕組みだった。旅客需要が伸びた際も、車両リース会社やレール・トラック社が設備投資をしなかったため、対処しきれなかったこともある。
また、インフラ部分を担うレール・トラック社は技術部門を持たず、さらに設備保守会社と工事会社に分割された。レール・トラック社による過度なコスト削減要求と、設備保守会社、工事会社とのいびつな関係によりハットフィールド脱線事故が発生し、民営化の欠陥が露呈したといえる。その後、レール・トラック社は破綻し、公的機関のネットワーク・レールがインフラ部門を担うこととなった。