物流危機は「M&A」で本当に解決できるのか? 「日本企業は買収下手」説の実態とは? 成功と失敗の分かれ目を探る
近年、運送業界の人材不足問題や2024年問題への対応など、M&Aや買収が相次いでいる。本当に、業界に突破口を開くことができるのだろうか。
物流M&Aをバブルに終わらせないために

最後に、冒頭に挙げた「M&Aが物流危機の解消につながるか」という疑問への答えを述べて、本稿の結びとしたい。
M&Aが物流危機の解消につながるためには、「1 + 1 = 2」という単純な企業合併以上の効果を得ることが必要である。そのためには、前項で挙げた物流MaaSへの対応やラストマイル物流の効率化などの課題をクリアすることが必要である。
また、買収価格の問題も看過できない。前述のとおり、一部には非合理的にも見えるプレミアムの乗った価格で買収されるケースがあるが、割高な買収価格が肯定されるのは、
・合併によって生じるシナジー
・事業構造の改革の効果
がそれを上回る場合である。近年の物流M&A事例がそのような条件を満たすか、といえば疑問が残る。高値で買った企業は買収先企業のコスト削減を迫ることによって、「元を取る」かもしれない。これは残念ながら、物流危機の解決とは真逆のベクトルである。
「日本企業は買収下手」という見方はかなり一般的だと思うが、その理由のひとつは、
「経営者の多くが生え抜き」
であり、M&Aの知識・経験が少ないことだろう。物流業界の場合は特に、その傾向が強いと思われるが、逆にいえば、適切な外部からの支援やノウハウの蓄積を進めることで、より効果的なM&Aを実現できる可能性もある。
以上、やや否定的な意見を述べたが、過当競争の状態にある物流業界で再編が進むこと自体は、大いに歓迎すべきである。また、個別に見るとSBSHDのように、M&Aを自社の成長の原動力としてきた会社も少なくない。
近年のM&Aブームが仲介会社主導のバブルに終わることなく、物流業界の活性化につながるために、ここで述べたような課題への議論が深まることを期待したい。