物流危機は「M&A」で本当に解決できるのか? 「日本企業は買収下手」説の実態とは? 成功と失敗の分かれ目を探る
物流M&Aの背景

●2024年問題によるトラック不足
M&Aが進展している背景要因を、事例を交えながら解説していきたい。最初に取り上げたいのは、冒頭にも触れた2024年問題と物流危機である。前項で例示したM&A事例のうち、特に物流危機の影響を色濃く反映しているのは、C&FロジHD(東京都新宿区)の事例だろう。
C&FロジHDは名糖運輸やヒューテックノオリンなどを傘下に置く持ち株会社である。名糖運輸は、その名前から推察できるとおり、「メイトー」ブランドのアイスクリームで知られる協同乳業との関係が深い。ヒューテックノオリンも冷凍食品等を担う同じく低温物流大手である。両社ともに低温物流が得意な大手物流会社であり、会社の成立の経緯もあって、農林水産業分野の大手荷主と親密な関係を築いている。
このように、日本の食卓を支えるコールドチェーンの一翼を担っているといってもよい同社だが、その低温物流分野というのは、他分野以上にトラック不足の問題が顕在化している。その理由はいくつかあるが、ひとつは
「冷蔵倉庫の特性」
だ。常温の倉庫ではバース上にあらかじめ荷ぞろえした貨物を並べておき、到着したトラックに引き渡すのに対し、一般的に広い荷さばきスペースを取れない冷蔵倉庫では、トラック到着後に荷ぞろえ作業を行うケースが多い。また、冷蔵倉庫は高度成長期に建てられた古い倉庫の割合が高く、今どきの大型物流施設と比べて導線設計などに課題を抱えるものも目立つ。
以上のような倉庫側の要因に加えて、バンタイプが主流の冷蔵車はウイング車と比べて
・荷役効率が低い
・手積みの貨物が多い
といったトラック側の要因も大きい。いずれにせよ低温物流ではドライバーの長時間待機や荷役時間の短縮が難しく、そのため厳しいドライバー不足に見舞われているのである。
C&FロジHDを巡っては、セイノーHDとAZ-COM丸和HDという大企業が繰り広げた争奪戦が大々的に報じられたわけだが、C&Fロジというやや地味ともいえる企業の奪い合いが生じた理由は、同社が優良な荷主を抱えているということに加えて、以上のような低温物流におけるトラック不足の影響を抜きにしては語れない。