物流危機は「M&A」で本当に解決できるのか? 「日本企業は買収下手」説の実態とは? 成功と失敗の分かれ目を探る

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近年、運送業界の人材不足問題や2024年問題への対応など、M&Aや買収が相次いでいる。本当に、業界に突破口を開くことができるのだろうか。

優良企業が多い物流子会社

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 物流子会社がM&Aのターゲットとされがちな2点目の理由は、皮肉なことだが、荷主系物流子会社には

「経営が順調な企業が多い」

という点である。経営が順調だということは、その企業価値向上に直結するわけだが、これは親会社にとって売却の強い動機付けを生む。

 数ある物流子会社のなかでも、経営の優良さが目立つ企業といえば、アルプス物流(神奈川県横浜市)である。同社は半導体物流の専門企業であるが(そのほか、生協の物流なども手がけている)、近年の半導体需要拡大の波に乗って、好調な経営を維持している。特に、主要な半導体需要家が集中する中国およびアジア域内にきめ細かな物流網を築いており、これが同社の優位性を確たるものとしている。

 アルプス物流は、ある意味では半導体商社のような性質と、グローバルなフォワーダー(荷主から貨物を引き受け、他社の輸送手段を利用して輸送を請け負う事業者)のような機能を併せ持った企業であるともいえ、そのため、強固な経営基盤を確保するに至っているのである。

 同社はやや特殊だが同様の成功例は他にも見られる。親会社の物流管理を目的として設立された物流子会社が、自社の強みを生かして好業績を上げる例は少なくないのである。実際、親会社以上に安定収益を上げている企業もあるし、また、優良な含み資産を抱えているケースもある。このような物流子会社が売却の候補となるのは、ある意味では当然だともいえる。

 なお、このような優良子会社の場合、親会社から売却された結果、さらに経営が好転する例も多い。強い経営基盤を有する物流子会社の場合、子会社側に取っても

「親離れ」

のメリットが大きいという点は、あえて強調しておきたい。

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