若者だって座りたいんだよ! 公共交通「席譲り」論争を分析する
鉄道の「席ゆずり」論争は、マナー意識と混雑が引き金。監視ポスターや厳しいマナー指導は根本的な解決にはならない。公共交通の運営方針に改革が必要だ。
結局、誰のための鉄道なのか

国鉄の分割民営のとき、ある経済学者が
「その最大の成果は、国民の足が国民の手に帰ってきたことだ」
と豪語していたが、実際はどうだろうか。図は金融庁の有価証券情報開示システム(EDINET)より、現在までに完全民営化したJR4社(東日本・東海・西日本・九州)と、大手民鉄7社の2024年3月末の株式所有者別の状況である。JRは
「金融関係の法人の比率」
が8割前後を占め、そのうち外国ファンドが3割以上に達する会社もある。企業としては「株主ファースト」にならざるをえず、利用者はステークホルダーではない。その“しわ寄せ”として、大都市圏でさえ「みどりの窓口」の廃止などサービス低下が加速している。
以前に筆者(上岡直見、交通専門家)のもとに相談に来た自治体の担当者から直接聞いたことだが、混雑解消をJRの支社に要望したところ
「列車が混んでいないと本社に申しわけが立たない」
と拒否されたという。また電車を走らせるための基本的なインフラである電気設備のトラブルによる長時間運休なども何度か発生している。JRほか大手の鉄道事業者は新幹線(JR)と大都市圏の詰めこみ輸送、すなわち「やむをえず乗る」利用者だけでも経営は成り立つから、混雑緩和のための積極的な投資は考慮されない。
いったい誰のための鉄道なのか、根本的な問題として公共交通を営利事業に任せることが適切なのか。「マナー」を利用者どうしの問題にとどめるのではなく、その背景にも注目する必要がある。