若者だって座りたいんだよ! 公共交通「席譲り」論争を分析する

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鉄道の「席ゆずり」論争は、マナー意識と混雑が引き金。監視ポスターや厳しいマナー指導は根本的な解決にはならない。公共交通の運営方針に改革が必要だ。

「足らぬ足らぬはマナーが足らぬ」

トイレ前(画像:上岡直見)
トイレ前(画像:上岡直見)

 鉄道事業者は「マナー」を強調するが、現在の日本で「マナー」とされている行為の大半は、混雑さえなければそもそも必要がない。

 前述の「つめておしまい」にも背景がある。この地域では国鉄時代(民営化前)と比べると、

・列車の編成両数の削減
・車両の小型化

により、朝の通勤・通学時でも座席の数が約6分の1に減っている。沿線の若年人口が減っているとはいえこれは極端に過ぎるのではないか。

 他の地域でも同様である。関東地方の地方都市で、最近のダイヤ改訂で列車本数や編成両数の削減があり、朝の通勤・通学時に積み残しが発生する状況になったが、自治体や学校関係者が鉄道事業者に苦情を伝えても聞く耳を持たない態度だという。

 このような状態で利用者に「マナー」を求めても説得力は乏しい。物資の不足を

「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」

で乗り切ろうとした戦時中の発想と変わらない。画像はある県の県庁所在地付近の状況だが、ここでも編成両数の削減のため、せっかく若いカップルが鉄道を使ってくれているのに、座れずにトイレの前に立っている。ビジネスでは

「苦情をいってくる客はまだいい。一番怖いのは何もいわずに去ってゆく客だ」

という格言がある。利用者が将来にわたって鉄道を使い続けてくれるのか、それとも「もうこんな乗りものは使わない」と見放されてしまうのか、鉄道事業者にとって豪華クルーズトレインなどを走らせるより

「はるかに重要な経営課題」

ではないのか。

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