米国EVメーカー「フィスカー」経営破綻! EVアンチが素直に喜べない「3つの破綻原因」とは

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米新興EVフィスカーは経営破綻し、多額の負債と品質問題が原因で株価急落。リビアンとルーシッドも赤字だが資金調達に成功し、事業拡大を進めている。

破綻に至った三つの根本原因

フィスカーのウェブサイト(画像:フィスカー)
フィスカーのウェブサイト(画像:フィスカー)

 フィスカーが経営破綻に至った根本原因は、主に三つある。

 まず第一に、フィスカーのラインアップがスポーツタイプ多目的車(SUV)に特化していた点である。SUVのようなクロスオーバーと呼ばれる車種は売れ筋とされ、そこにフォーカスしたマーケティング戦略は順当といえる。

 しかし裏を返せば、各社が競い合うマーケットであり、競争は激しく、他社との差別化なくして生き残れない。オーシャンは6万ドルからという価格設定に対して、航続距離が360マイル(約576km)、出力564HPなど、特筆するようなパフォーマンスはなく、他社に抜きんでる点は見当たらなかった。加えて、コンシューマーリポート誌など米国で試乗リポートを掲載する自動車雑誌は、ことごとくオーシャンを酷評し、魅力あるクルマ作りができていなかった。

 次に挙げられるのは、EVメーカーとして致命的ともいえるほど品質問題が頻発した点だ。フィスカーは2020年の会社設立後、自動車業界として異例の早さでEV開発を成し遂げたとされた。しかし、実態は不完全なままで新車を世に送り出し、後からオーバー・ジ・エア(OTA)と呼ばれるソフトウエアの自動更新によって装備を拡充する策を取っていた。これが完全に裏目となり、予定していたタイミングでソフトが更新されず、ソフト自体にも不具合が見つかることが幾度となく繰り返され、市場での信頼を失った。

 さらに、フィスカーが投資を抑えるために取った策として、マグナ・シュタイヤー(オーストリア)へEV生産を委託するファブレス形態を取った点も根本原因のひとつとして挙げられる。投資を抑えるアセットライトな経営手法を取り入れ、固定費負担を軽減するメリットはあったが、生産に関する知見が社内に蓄積されなかったことがあだとなり、品質問題への対応が後手に回った。

 一説では、フィスカーは、販売当初から十分なアフターパーツの在庫を確保しておらず、部品交換に数か月を要していたとされる。EV1台をまるごと解体して、交換部品を抜き取っていたほどだったという話もあり、品質問題が噴出していたなかで部品在庫の確保にも相当に苦労していたようだ。

 このように、フィスカーの経営実態としては、自動車メーカーとして

「機能不全」

に陥っており、経営破綻はいわば当然の結果であったといえよう。オーシャンの販売目標は2万3000台だったが、生産されたのは1万台あまりで、そのうち5000台は販売されずに在庫のままに終わったという悲劇的な結末を迎えた。

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