自動車の血管「ワイヤーハーネス」 進む電装化で“本数増加”という困難課題、新技術・素材革新の最前線とは
車の電子機器を接続するために欠かせないのがワイヤーハーネスだ。現在、搭載システムの増加にともない、その本数も増え、さまざまな課題を抱えている。
アルミ製品の採用増加

自動車メーカーやサプライヤーは、増加する車載ハーネスへのさまざまな対応策を検討しているが、そのなかにはすでに採用が増えているものもある。
車載ハーネスの増加で問題となっている重量とコストアップの原因の多くは、前述のとおり、芯材である銅にあり、この点を改善するためにアルミを素材としたハーネスが登場している。
アルミは比重が銅の約3割しかないため、ワイヤーハーネスを大幅に軽量化できる素材だ。また、価格も銅の3割程度とかなり安価な素材であるため、コストダウンも期待できる。しかし、銅に比べて導電性が低いため効率が悪く、また端子表面に不動態皮膜が形成され、通電性が低下する。ただ、技術的な面は次第に改善されている。
業界大手の古河電気工業(東京都千代田区)は、将来的にアルミハーネスの使用率を現在の4割から6割に引き上げる方針を打ち出しており、現状ではそれがひとつの解決策となっている。
一方、ワイヤーハーネスに代わる他の方式も台頭してきており、現在研究段階だが、実用化のめどが立っているのは次のふたつだ。
ひとつめは、ワイヤーハーネスを光ファイバーに置き換える方法で、電気信号を伝送する金属製のワイヤーハーネスに対し、光ファイバーによる高速通信が魅力である。
もうひとつは、ワイヤーハーネスそのものをなくし、無線方式で通信する方法で、ハーネスが不要になることで軽量化に大きく貢献する。
ただし、いずれの方式も現時点では量産車への実用化には至っておらず、課題も残っているため、今後の研究が期待される。