自動車の血管「ワイヤーハーネス」 進む電装化で“本数増加”という困難課題、新技術・素材革新の最前線とは
車の電子機器を接続するために欠かせないのがワイヤーハーネスだ。現在、搭載システムの増加にともない、その本数も増え、さまざまな課題を抱えている。
増加する複雑な車の電装品
現代の車には複雑なシステムが不可欠であり、走行支援機能や安全機能は年々増加している。これらの電子機器をつなぐために欠かせないのが「ワイヤーハーネス」だ。人間でいえば血管や神経に相当する重要な部品である。しかし、車のシステム数が増えれば増えるほど、ワイヤーハーネスの本数も増え、さまざまな課題を抱えている。
ワイヤーハーネスとは、電気を通す電線と、その電気を周囲の外部に接続・伝送する端子やコネクタで構成される部品の集合体である。近年の車では車全体に使われている。かつての車には現在のように多くの電装品がなく、エンジンやライト、内装などをつなぐワイヤーハーネスの数も限られていた。
しかし、エンジンの電子制御化などコンピューター制御が基本になると、各種システムをコンピューターに接続するためのワイヤーハーネスの本数が飛躍的に増え、年々電装品が増えるたびにその本数も増えていった。
さらに最近では、ハイブリッド車や電気自動車のパワートレイン(車の推進力に関する装置の総称)がモーター駆動になり、駆動用バッテリーとモーターなどをつなぐ高電圧ハーネスの増加がさらに加速している。
ワイヤーハーネスの増加は、車にとって単純な問題を引き起こす。増加は重量が増え、コストが上がるということなのだ。
現在の車に使われているワイヤーハーネスの総延長は、1台あたり数kmにも及び、重量も20~40kgと重い。車の総重量が増え、燃費が悪くなり、走行性能にも影響する。
また、主材料である銅の価格は過去10年間で40%近く上昇しており、今後も上昇し続けるため、ワイヤーハーネスの増加は車の価格にも影響する。