「メガSUVブーム」欧州で大問題に! 車両の大型化で死亡リスク30%増の報告、パリではSUV規制を問う住民投票も【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(20)

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EUと英国で販売される自動車の全幅は、毎年0.5cmずつ拡大し続けているという。この背景には何があるのか。

フロントエンドと死亡リスクの関係

メガSUVの台頭が他の移動手段の走行環境を脅かしている(画像:欧州交通環境連盟)
メガSUVの台頭が他の移動手段の走行環境を脅かしている(画像:欧州交通環境連盟)

 車両が大型化していくことの弊害も報告され始めている。2024年1月19日に学術誌サイエンスダイレクトに掲載された米国の研究によると、歩行者が車にひかれて死亡するリスクは、車のサイズが大きくなるほど高まるという。

 ハワイ大学マノア校の経済学研究者ジャスティン・ティンダル氏によると、2016年から2021年の間に米国で発生した歩行者が巻き込まれた交通事故3400件のうち、308件が歩行者死亡につながったとされており、車両のサイズや重量、特に

「フロントエンドの高さ」

と密接な関係があったことを明らかにしている点で興味深い。彼の研究成果では、

「車の前部の高さが10cm高くなると、死亡リスクが22%増加する」

と指摘しており、女性、子ども、高齢者はさらにそのリスクが高かったそうだ。

 同様にベルギーの交通安全研究所では、2017年から2021年までのベルギーの衝突事故データから、車の前部の高さが10cm高くなることで、歩行者や自転車に衝突した際の死亡リスクが30%上昇することが報告されている。

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