観光を「真の平和産業」にする唯一の方法! それは、その意味を積極的に語ることだ【リレー連載】平和産業としての令和観光論(6)

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令和時代において、観光は単なる経済活動にとどまらず、文化交流や国際理解を促進し、平和構築の一翼を担う重要な要素として位置づけられている。コロナ禍以後の、観光を通じた令和の新たな国際関係構築のあり方について、議論を深めていく。

能動的な平和成就への活動

観光地のイメージ(画像:写真AC)
観光地のイメージ(画像:写真AC)

 平和の定義をもう一度おさらいしてみよう。

「1.やすらかにやわらぐこと。おだやかで変りのないこと。2.戦争がなくて世が安穏であること。」

 今、日本に戦争はない。しかし、「やすらかでやわらぐ、おだやかで変りのない」平和な生活は、一瞬にして崩壊することを、われわれ日本人は今まさに身をもって体感している。

 2024年1月1日、最大震度7という地震が能登半島を襲った。時を追うごとに明らかとなる被災地の惨状に、言葉にならない恐怖や不安、寄せるに寄せきれない同情心が渦巻く。心が痛んでいるのは、多くの国民が同じであろう。

 2011(平成23)年3月の東日本大震災の直後は、自粛が叫ばれた。笑ってはいけない。楽しんではならない。大変な思いをしている人がいるときに、音楽どころではない。娯楽芸能など不謹慎だ。旅行なんて不要不急のぜいたくはすべきでない。そんな風潮が当然となっていた。

 被災をまぬがれた者も、被災者とその苦しみを共有し、痛み分けすべきだ。多くがそう信じ、エンターテインメントに興じることも、旅行を楽しむこともやめてしまった。そうして日本経済は停滞した。

 細部事情は違えど、今回の能登半島地震では、東日本大震災のときに自然と巻き起こった顕著な自粛ムードは感じられない。テレビも早々に通常放送を再開し、被災地以外では、直接的な事情や理由などがない限り、震災を理由にイベントが取りやめられるという話も聞かない。そんななか、

「経済を回そう」

という声がSNSなどあちこちで聞かれ、はっとした。

 東日本大震災の経験から、われわれは学んでいる。幸いにも被災しなかった者が被災地のためにすべきこと、それは、自粛することではなく、積極的に日常を取り戻し、経済を回すことだと。

 折りしも、能登半島が位置する北陸地方では、この春、北陸新幹線の金沢と敦賀間が開通する予定となっていた。関東や関西からの特急乗り入れも始まり、北陸への旅への利便性が高まると大きく期待されていた矢先の被災だった。

 路線開業予定について地震の影響が懸念されていたが、1月10日の会見で石川県知事は、

「奥能登は大変厳しい状況だが、金沢や加賀地方の観光地など、人の交流を絶やすべきではない。経済活動を通じて、石川県や能登を支えてもらいたい」

と述べている。

 被災地の復興のために何とかして力になりたいと考える場合、貢献できることのひとつとして、観光を視野に入れることができる。復興の兆しを確認できたときには、北陸を観光旅行で訪れ、盛り上げようと、そう考えている人も多いと聞く。

「平和」という言葉がもつもうひとつの意味、「やすらかでおだやか」な日常を被災した北陸の人々が取り戻すため、観光が、今後その一助となりうることは一筋の光だ。まさに今、われわれ日本人はそう感じ、念じ、行動しようとしている。

 観光は、平和産業である。

この言葉が持つ能動的な意味を身を持って感ずる2024年である。

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