観光を「真の平和産業」にする唯一の方法! それは、その意味を積極的に語ることだ【リレー連載】平和産業としての令和観光論(6)
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- 観光, 旅行, 平和産業としての令和観光論
令和時代において、観光は単なる経済活動にとどまらず、文化交流や国際理解を促進し、平和構築の一翼を担う重要な要素として位置づけられている。コロナ禍以後の、観光を通じた令和の新たな国際関係構築のあり方について、議論を深めていく。
受動から能動としての観光
観光は平和産業である。
この言葉には、受動的な見方と能動的な見方、ふたつの面がある。湾岸戦争や同時多発テロなど、安全面の懸念から海外旅行自粛が叫ばれた時期や、リーマンショックで世界経済が危機におちいり、観光が影響を受けた時期が過去にあった。近年では、新型コロナの感染対策で人の移動が制限され、全世界的に観光業界が大きなダメージを受けたことは記憶にも新しい。
現在も、内戦が続くアフリカの国々、ウクライナ情勢、さらにパレスチナ紛争と、戦争による危険地域も多く、世界のあちこちで観光旅行などできる状況ではない人々が多く存在する。まさに、平和でないと観光などできやしない。観光が、受動的な意味で平和産業だと語られる側面だ。
観光は、社会情勢に左右されやすい点で受け身にとられる。しかしそれで済ませては、常に平和を切望して生きるわれわれ人間にとって発展性がない。観光は、
「能動的な意味合いで語られてこそ」
平和産業といえるはずだ。
「平和」とは一体何か。辞書を参照すると、
1.やすらかにやわらぐこと。おだやかで変りのないこと
2.戦争がなくて世が安穏であること
とある。「やすらかにやわらぎ、おだやかで変りのない」生活や「戦争がなく、安泰な」世界を能動的に産み出す力が、果たして観光にあるだろうか。
ということで本稿では、観光が能動的に平和ヘ貢献しうる側面に、考えを巡らせてみようと思う。