観光を「真の平和産業」にする唯一の方法! それは、その意味を積極的に語ることだ【リレー連載】平和産業としての令和観光論(6)
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着地型観光と地域経済の活性化

異文化への理解は、旅行者側に働きかけられる面だ。旅行者を受け入れる側への貢献にも目を向けてみる。まずは観光による地域経済の活性化があげられる。
日本への旅行者数は、「2010年に訪日外客数1000万人を目指す」とされた2003(平成15)年の政府施策もあり、継続して右肩上がりとなってきた。2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災という特殊な要因による落ち込みを除けば、格安航空会社(LCC)の台頭や観光ビザの発給要件緩和や免除による後押しもあり、2013年には、目標の1000万人を突破している。そして、2019年からのコロナ禍の期間まで、その後もずっと右肩上がりに伸び続けているのだ。
旅行の内容にも変化が見られる。かつては、旅行会社企画のマスツーリズム(有名観光地へのパッケージツアー)が主流だったが、インターネットにより、情報を個人でも獲得できるようになった昨今では、個々の興味や目的に合わせ、よりカスタマイズされた個人旅行に近い「着地型観光」が好まれる傾向になっている。
さまざまな地域へと観光客を呼び込む着地型観光は、旅行者を受け入れる側の地域(着地)側が、その地ならではの特色をアピールし、観光産業につなげる動きだ。特色ある観光資源や商品、体験プログラムの企画など、著名な観光地ではなくとも、コアな地域単位で観光産業を発展させる可能性が広がった。
国内外からの観光収入でその地域が潤う。雇用も生まれる。住民にとっても、居住している「ふるさと」に誇りを感じるいわゆる
「シビックプライド」
を育むことにもつながり、活性化効果があらわれる。
経済的な豊かさが市民生活を、平和の定義「やすらかにやわらぐこと。おだやかで変りのないこと」へと導くことができるのであれば、観光は平和産業であるといえる。
しかし、実際のところ、観光収入が地域に落ちず、巨大資本などの地域外企業などに流れてしまうという指摘もある。また、観光客が集中することで、地域住民の日常生活に影響が及ぶ観光公害、オーバーツーリズムを引き起こすという問題もある。さらに、観光客の増加が環境に及ぼす悪影響を懸念する声もある。
観光により地域が潤うためには、解決すべき課題は多い。しかし、独特の文化と歴史を有する日本という国だからこそ、過疎化で疲弊する地方の地域にとっては、あるがままの姿を逆手に活用して観光客を誘致しようとするという活動は、大きな可能性や意義を持つ。
地域の活性化で、少なからず地域住民に経済的、心理的な豊かさがもたらされるなら、直接的にも間接的にも心身が「安らかにやわらぐ、おだやかで変りのない」生活を作り出す、そんな可能性がある。実現できれば、意味ある平和産業だ。