船舶のスエズ運河回避で、「海運会社の株価」が急上昇したワケ
紅海航行の行方

今や世界中でさまざまな情報が飛び交っており、今後の紅海の安全な航行を残念ながら誰も見通せていない。
2024年に入ってから、米国・英国両軍によるフーシ派の拠点攻撃が始まったが、安定には程遠いと見られている。またフーシ派も、真偽は定かではないものの、米国船籍の貨物線にミサイル攻撃を行ったと主張している。いずれにせよ、報復合戦が繰り広げられてさらに危険な海域となるリスクがあることには変わりない。
そしてもうひとつのアクションが、中国によるイランへの圧力だ。
ロイター(1月26日付け)によると、中国政府がイランに対し、親イラン武装組織であるフーシ派による紅海での船舶攻撃を抑制するように要請したとのことだ。
「抑制しなければ、中国とイランの通商関係に影響をおよぼす恐れがある」
と言及したという。
ここで、日本貿易振興機構の資料から、欧州から見た中国および日本の輸出入実績(2022年)を見てみよう。
・対中国:輸出23万406(百万ユーロ)、輸入62万6525(百万ユーロ)
・対日本:輸出7万1590(百万ユーロ)、輸入6万9959(百万ユーロ)
欧州の輸入実績全体における中国の構成比は
「20%」
と大きな割合を占めており、かつ過剰な輸入超過が貿易摩擦の温床となっているものの、中国から見れば欧州は重要なマーケットには変わりない。
中国にとっては、自国の景気の先行きが不透明ななか、フーシ派による船舶攻撃で欧州市場へのアクセスを阻害されたものではたまったものではない。
ただ、先のロイター記事では、「どのように影響を受けるかについて具体的な発言や警告はなかった」とあり、どこまで中国が踏み込むのか、そして効果が得られるのか見通せていない。
紅海の安全な航行が確実なものとならないかぎり、臆測や期待をはらんださまざまな情報により多少の乱高下があるものの、ここしばらくは海運株が高値で推移する可能性がある。