自動車メーカー・航空会社はなぜプロ野球ではなく「Jリーグ」に参入したのか? 開幕30周年記念で考える

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2023年、Jリーグは開幕30周年を迎えた。このアニバーサリーイヤーの締めくくりとして、日本のプロサッカーの発展においてモビリティ産業が果たした重要な役割について深く考えてみたい。

バブル時代の舞台裏

バブル経済期のイメージ(画像:写真AC)
バブル経済期のイメージ(画像:写真AC)

 残った三つの理由を解説する。

●バブル経済期だったから
 サッカーのプロ化に向けた具体的な動きは1988(昭和63)年から始まり、1990(平成2)年にはJSL参加クラブにプロリーグへの参加要請がなされた。この頃の日本はバブル絶頂期で、経済的な豊かさから多くの企業が余剰資金を持ち、新たな投資機会を探していた。そこで提示されたのがJリーグ創設の構想だった。既存企業の影響力が強いプロ野球とは異なり、新市場であるプロサッカーへの投資は、ブランド価値の向上と社会貢献の両立を図ることができ、これらの企業にとって理想的な選択肢だった。

 Jリーグが開幕した1993年当時、バブル経済はすでに崩壊していたが、世の中にはまだ余韻が残っており、企業はまだ大胆なリストラを断行するほどの状況ではなかった。ホンダのようにアマチュアにとどまることを選択した企業もあったが、JSLの多くのクラブはプロ化に傾いた。

●サッカーには国際的な将来性があったから
 一般的に、鉄道会社の事業範囲は国内の特定地域に限定されるのに対し、自動車メーカーや航空会社などはグローバルな視点が必要とされる。国際的なスポーツであるサッカーへの投資もその一環だった。1980年代から日本で開催され、トヨタが冠スポンサーとなり日本で開催されたクラブチーム世界一決定戦「インターコンチネンタルカップ(トヨタカップ)」の盛り上がりも見逃せない要素だった。

 同時に、この時期、テレビが多チャンネル化に向かっていたこともあり、新しいスポーツコンテンツへの需要が高まることは確実だった。こうした要因も、スポーツのプロ化を後押ししたといえるだろう。

●新リーグゆえ低リスクだったから
 Jリーグが発足した当時は、その新規性が企業にとって魅力的な投資対象だった。Jリーグはプロ野球と違い、慣習や長い歴史に縛られることなく、投資額や運営コストの設定や調整がある程度自由にできるという利点があった。プロ野球よりも低いリスクでスポーツマーケティングへの新規参入を模索できる点も、各社がプロ化に踏み切った理由のひとつになったとも考えられる。

 いくつもの偶然と必然が重なった結果、モビリティ系企業はJリーグ発足に大きな役割を果たすことになったのである。

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