トヨタ純利益過去最高の3.9兆円にみる、「次世代自動車」の本命とは? 日本を“エネルギー強国”にするための8策を提言する
日本を“エネルギー強国”にする八策

出遅れを取り戻し、再生可能エネルギーで日本が世界をリードするために、筆者(窪田真之、ストラテジスト)は「日本をエネルギー強国にする八策」として、次の八つの政策が必要と考えている。
1.電力再編:送配電は全国2社に統合
2.太陽光・風力大規模化:居住地域と発電地域を分断
3.液化天然ガス(LNG)火力拡大(脱炭素第1段階):再生エネ拡大に必要な調整電源
4.原発の活用(脱炭素第1段階):安全基準順守
5.地熱発電拡大:三大地熱資源国のメリットを生かす
6.高温岩体発電の開発継続:成功すれば恒久電源となる可能性
7.水素流通インフラ構築(脱炭素第2段階):グリーン水素の世界的流通可能に
8.水素エネルギー循環確立(脱炭素第2段階):水素発電・水素製鉄実用化、水素エネルギー車普及へ
上記八策のうち、喫緊の課題として重要な第1策「電力再編:送配電は全国2社に統合」について解説しよう。
電力自由化は、既存の電力会社を
・発電
・電力小売り
・送電
・配電
の4事業に分割し、新規参入を進めることで完成したこととなっている。分割して競争を促進することだけを考えた自由化だったため、致命的な問題が残っているのだ。最大の問題は、送配電ネットワークを統合して
「電力需給の調整を効率化する視点」
がなかったことである。
発電と電力小売りで競争を促進することは必要だった。ただし、送配電は逆に完全な独占状態をつくり出すことで電力供給の安定性と効率性を担保すべきだ。日本では東西で周波数が異なる問題があるので、取りあえず周波数の異なる東西2社に統合することを急ぐべきと提言する。
電力自由化で参考にすべきは、通信の自由化だ。NTTを分割民営化して競争を促進したが、短距離通信網は東西NTTに独占させている。通信ネットワークと電力ネットワークでは、質的に異なる部分が多いが、ひとつ重要な共通点がある。それは、
「全国細切れのネットワークでは効率が悪い」
ことだ。
通信を利用するビジネスでは、網の目のように張り巡らされたNTTの短距離固定通信網が生命線となる。この短距離網を利用しないことには、携帯電話もいかなるインターネットサービスも行うことができない。
その短距離網は、NTT東日本とNTT西日本の2社に事実上、独占されている。短距離網の運営会社が、電力産業のように全国に10社もあったら、ネットワークの運営が極めて非効率になるからだ。そうならないように、旧電電公社の分割民営化の際に、短距離網の運営は2社に集約した。独占の弊害は生じていない。NTTは、短距離通信網を安価に利用開放する義務を負っているからだ。
電力業界も同じ改革を早急に実施する必要がある。電力ネットワークは、周波数の異なる全国2社に統合されるべきである。そうすることで、電力ネットワークがより効率的に運用され、需給が安定し、再生可能エネルギーの導入が拡大するはずだ。