トヨタ純利益過去最高の3.9兆円にみる、「次世代自動車」の本命とは? 日本を“エネルギー強国”にするための8策を提言する
送配電ネットワークの課題
エネルギー転換での出遅れは、トヨタだけでなく日本全体の問題だ。日本が化石燃料の省エネ・環境技術で世界トップに立っていることが、再生可能エネルギーへの転換を遅らせる要因になっている面もある。
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1970年代のオイルショックを省エネとコストカットで乗り越えて以降、日本は常に
「省エネ・環境技術」
で世界トップクラスの地位を維持してきた。ところが今、世界中の国々が取り組む「脱炭素・新エネルギーへの転換」では出遅れている。その根本原因として、ふたつの問題がある。
●送配電ネットワークが全国10電力会社に分断されている問題
再生可能エネルギーは出力が不安定であるため、依存度が高まると、出力が急低下したときに大規模停電を起こすリスクが高まる。それを防ぐためには、再生エネ発電量の増減に合わせて機動的に発電量を増減できる調整電源が必要だ。現時点で、その役割を果たせるのはガス火力発電しかない。
出力変動にともなう電力需給調整は、広域で行うほど効率的である。日本全国をひとつの送配電ネットワークに統合し、そのなかで需給調整すれば効率的な調整が可能だ。ところが、日本の送配電ネットワークは現在、10電力会社に細かく分断されていて、狭い地域内で需給調整しなければならない問題がある。
そのため、需給変動に対応しきれない電力会社が、大きく増えたメガソーラーの電気の買い取りを拒否する問題が起こっている。買い取り拒否によってメガソーラーの収益は悪化し、日本全体で再生可能エネルギーへの転換を遅らせる要因となっている。
●再生可能エネルギーの環境問題、小規模事業者の増加
持続可能なエネルギー循環社会を作るために進める自然エネルギーの活用だが、皮肉なことに、必ず環境問題に突き当たる。メガソーラーでは森林など環境破壊をめぐり近隣住民とのトラブルが絶えない。風力発電には、重低音公害の問題があり、洋上風力も漁業資源への影響が心配される。地熱発電は、温泉資源への影響を懸念する温泉業界から反対を受けている。
自然エネルギーで発電する地域には過疎地が選ばれることが多いが、それでも人がまったく住んでいない場所はない。自然エネルギーの活用は、常に環境問題をクリアしながら進めることが求められる。
その結果、日本の再生可能エネルギーには小規模事業者が多くなり、規模を生かしたコスト削減ができなくなっているのだ。