トヨタ、コロナ後の業績回復も 全然油断できない「中国事情」

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8月1日、トヨタは2023年度第1四半期の連結決算を発表した。それから約1か月が経過。さまざまな方向からの分析を経て、トヨタの現在の経営状況とグローバル市場における当面の課題の詳細が明らかになりつつある。

予断を許さない中国市場

中国の街並み(画像:写真AC)
中国の街並み(画像:写真AC)

 と、ここまでは良好だった決算結果を根拠に明るい話題として結論付けた。しかしトヨタにとって、依然として予断を許さない市場があることを忘れてはいけない。他でもない、それは

「中国市場」

である。

 既述したとおり、グローバル市場における各地の生産台数は全ての地域で改善された。これは営業利益も基本的には同じだったのだが、唯一アジア地区の中国市場のみは営業利益が改善できなかった。

 中国市場での生産台数こそトヨタとレクサス合わせて対前年同期比8.6%増の約49万9000台を記録したのにも拘わらずだ。クルマは売れたのに収益が思いの外上がらなかったのはなぜか。

 こうした現象の原因だったのは、車両の生産自体に関連する利益率こそ改善された一方で、市場での他社製品との競合にともなう値下げ合戦。さらにはディーラーの経営基盤を強化するための諸経費などが高騰したことで、最終的には収益確保にはつながらなかったということである。

 中国は市場規模としては大きく、ビジネスチャンスの舞台としては非常に魅力がある。その一方で、特に昨今の中国市場の中核というべきEVについては、車両個々の性能よりは販売価格を重視する傾向が極めて大きい。

 一般に、中国市場以外での電気自動車は、それなりのプレミアムイメージとともに高性能であることが商品価値を高めている。かつては中国市場でも初期の顧客だった富裕層の間ではそうしたモデルが高く評価されていた。

 しかしここ数年は価格を引き下げたモデルこそが市場で高く評価される傾向にある。比亜迪(BYD)などはまさしくその代表だといっていいだろう。

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