隅田川で毎晩行われる「橋のライトアップ」 関東大震災からの復興が生み出した“未開拓の観光資産”をご存じか

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夜の隅田川には、花火大会当日だけでなく、毎晩行われる大きな魅力がある。しかし、もどかしいことに十分に生かされておらず、フルに体験できる日は限られている。

橋のスタイルが異なる理由

蔵前橋。隅田川の水上バスより。2022年1月撮影(画像:内田宗治)
蔵前橋。隅田川の水上バスより。2022年1月撮影(画像:内田宗治)

 当時、内務省復興局橋梁課長だった田中豊は、後年以下のように語っている(紅林章央『HERO』より)。

1.すべて同じ形式の橋を架けたら、一様に老朽化して同時期に架け替えが必要になってしまう。
2.もし構造に欠陥があれば、大地震が来たらすべて崩落してしまうリスクがある。
3.さまざまな形式の橋梁の設計や工事に携わることで、わが国の橋梁技術全体がアップする。

 特に「3」への思いが強かった。実際このとき、隅田川の橋梁建設を経験した技術者たちは、その後各県庁などへと赴任し、クルマ時代の到来に適応した橋を全国に建造していった。

 建設費の高騰に対しては、空襲にも強く、戦車が何台も通れるほど耐久性があるなど、さまざまな理由をつけて大蔵省を説得したという。

 震災復興として建設された隅田川の橋は、1998(平成10)年に架け替えられた相生橋を除いて九つの橋が健在だが、それぞれが個性に富む橋には、技術者の熱い情熱が刻まれているのである。

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