隅田川で毎晩行われる「橋のライトアップ」 関東大震災からの復興が生み出した“未開拓の観光資産”をご存じか

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夜の隅田川には、花火大会当日だけでなく、毎晩行われる大きな魅力がある。しかし、もどかしいことに十分に生かされておらず、フルに体験できる日は限られている。

代表的な隅田川の震災復興橋梁

厩橋。隅田川の水上バスより。2022年1月撮影(画像:内田宗治)
厩橋。隅田川の水上バスより。2022年1月撮影(画像:内田宗治)

 代表的な隅田川の震災復興橋梁を挙げておこう。

 国内で初めて支間長が100mを超え、堂々たる大きなアーチの架かる永代橋、ライン川に架かるケルン(ドイツの都市)のつり橋をモデルとした清洲橋、3連のアーチが印象的な厩(うまや)橋、橋桁の下にアーチのあるスタイリッシュな吾妻橋などで、それらは大正時代末から昭和初年頃にかけて建設された。

 なかでも永代橋はそのスケールから「震災復興のシンボル」、清洲橋はその美しさから「震災復興の華」と称されてきた。その下流、背の高い船を航行させるために橋の中央部がハの字型に開く跳開橋の勝鬨橋(1940年完成、1970年を最後に開いていない)を含めた3橋は、2007(平成19)年、道路橋としては初めて国の重要文化財に指定されている。

 これら隅田川の橋は、ひとつずつ見ても美しく興味深い。なんといっても船に乗ってこれらを連続してくぐっていくと、それぞれの構造が異なるため、よりいっそう印象深いものとなる。特に夕暮れから夜にかけ、それぞれが異なる趣向でライトアップされたなかを進むのは圧巻である。

 最もおすすめなのは、お台場海浜公園から浅草までの隅田川水上バス・クルーズ船。桟橋を出るとまずレインボーブリッジをくぐる。1993(平成5)年完成、塔高126m、支間長(しかんちょう。橋梁の支承から支承までの距離)が570mもあるいわば現代の橋である。

 築地大橋をくぐる付近から隅田川へと入り、そこからは勝鬨橋、さらに震災復興の七つの橋と、時代をさかのぼっていく。行く手には、これもライトアップされたスカイツリーの姿も見えてくる。浅草の下船場近く、最後にくぐる吾妻橋は、浅草のにぎわいを象徴させて朱色にライトアップされ、水面はさらに紅に輝いて見える。演出が最高潮に達して終了という形である。

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