プロ野球のヤクルトはなぜ「スワローズ」を名乗るのか? また、球団ファンを増やすために有効な“JRとの協働”とは

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球団のヤクルト、なぜチーム名は「スワローズ」なのか。意外と知られていない、その歴史をたどる。

野球場アクセスの特性

信濃町駅(画像:写真AC)
信濃町駅(画像:写真AC)

 筆者は、当媒体に以前書いた記事(「日本ハム新球場『新駅開業』 結局どんなメリットがあるのか?」2023年5月22日配信)で、野球場アクセスは、

・試合開始時刻が近づくにつれて球場最寄り駅の混雑が増す傾向にある
・試合終了後は最寄り駅に帰宅客が集中するという特性がある

ことを紹介した。前述した複数の変数も併せて考慮し、観戦客の分散を促す施策を行うことが、密集を緩和するうえでも必要である。

 JR東日本によると、試合開催日の混雑対策としては

「試合終了後の改札口混雑緩和のために、Suica等のICカードへの事前チャージや事前切符購入などの案内を行っている」

ことに加えて、

「ヤクルト球団や神宮球場から運行情報や駅の混雑状況の問い合わせがあった際は情報連携している」(首都圏本部広報ユニット)

という。

 同球場の各「入口」と周辺駅との間の所要時間や歩道・駅の混雑状況を、球場内のビジョンやスマートフォンにリアルタイムで案内・配信することで、乗車駅の変更と分散を一定程度促すことができるだろう。

スワローズ・JRの協働を

ベルーナドームに登場した「つば九郎」(画像:大塚良治)
ベルーナドームに登場した「つば九郎」(画像:大塚良治)

 このように、野球場アクセスにおいては試合終了後の混雑緩和が望まれるものの、鉄道事業者にとってはより多くの利用を促進することが収益確保のため必要な面もある。

 JR東日本においては、混雑が比較的緩やかな試合開始前後の時間帯にJR線の利用を促すアイデアを企画・実行することで、増収を図ることを検討したい。例えば、スワローズと連携したデジタルスタンプラリーや、観戦チケット付きの企画乗車券などの発売も、一考の余地がある。

 そして、ヤクルト球団においては、持続的経営を図るうえで、できる限り多くの入場者を確保することの重要性が今後ますます高まることは間違いない。

 スワローズの1試合平均の入場者数は、国鉄時代の最高値であった1958(昭和33)年の1万4232人(試合数65、年間入場者92万5100人)と比べて、コロナ前2019年では2万7543人(試合数71、年間入場者195万5578人)と、1試合平均・年間入場者数ともに約2倍に増えた。ヤクルト球団の取り組みが、入場者数増加を実現してきたといえる。

 しかし、観戦客を生み出す基盤となる総人口が減少するなかで、球団の自助努力だけで入場者数を増やし続けることは、徐々に困難となる。そこで、

「スワローズとJRの協働」

により話題性を高めることで、鉄道ファン・JRファンをスワローズファンへと誘導したい。協働のかたちとしては、JRバスの車体の「つばめ」をスワローズのロゴに変更することなどが考えられる。

 つば九郎神社開設を、スワローズとJRのつながりを拡大させる好機と捉え、JRグループ、ヤクルト球団、地域が一体となり協働を強化することを通して、JRグループ、プロ野球、ならびに東京ヤクルトスワローズの活性化とファン層の裾野拡大につなげてほしい。

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