プロ野球のヤクルトはなぜ「スワローズ」を名乗るのか? また、球団ファンを増やすために有効な“JRとの協働”とは

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球団のヤクルト、なぜチーム名は「スワローズ」なのか。意外と知られていない、その歴史をたどる。

ルーツをたどる

加藤佳一『つばめマークのバスが行く 時代とともに走る国鉄・JRバス』(画像:交通新聞社)
加藤佳一『つばめマークのバスが行く 時代とともに走る国鉄・JRバス』(画像:交通新聞社)

 また、JRバスでも国鉄時代の「つばめ」マークが一部デザイン変更のうえ、使われている。

 そのルーツは、1950年に、国鉄の公共企業体移行および国鉄自動車(国鉄バス)の開業20周年を記念して、新生国鉄自動車にふさわしいシンボルマークとして一般公募により定まった、動輪上に「つばめ」をあしらったマークである(加藤佳一『つばめマークのバスが行く 時代とともに走る国鉄・JRバス(Kindle版)』交通新聞社、2014年)。

 さらに、JR東海バスが「つばめツアー」の名称で旅行商品を発売しているほか、九州新幹線では、列車名に「つばめ」が使われている。2023年3月18日のダイヤ改正までは、東北本線・高崎線特急「スワローあかぎ」も存在した。JR東日本グループには「株式会社スワローツアー」もある。

 国鉄グループがプロ野球経営から手を引いて以降、国鉄・JRとスワローズの関係は、ルーツを同じくする「つばめ」のブランドを使っているという共通点がある程度であったが、スワローズとJRグループの間にひとつの結びつきが生まれた。「つば九郎神社」が、それである。

交流スペースとしての「つば九郎神社」

「アトレ信濃町」に開設された「つば九郎神社」。近隣住民も集う(画像:大塚良治)
「アトレ信濃町」に開設された「つば九郎神社」。近隣住民も集う(画像:大塚良治)

 2022年5月31日(火)よりJR東日本グループの「アトレ信濃町」2階に設置され、試合開催の有無にかかわらず、平日8~23時と、土日祝日10~23時に開放されている。アトレの担当者は

「2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を契機として、信濃町駅と神宮外苑周辺を盛り上げるために、以前から交流のあったヤクルト球団に提案し、賛同を得た」

と開設のきっかけを明かす。ヤクルト球団も

「近隣で地域交流のあったJR信濃町駅とアトレ信濃町から提案があり、コラボ企画が実現した」(広報部)

と説明する。

 つば九郎神社は、近隣住民が集う場にもなっている。ある平日の夕方に、筆者(大塚良治、経営学者)がつば九郎神社を訪れた際、小さな女の子3人を連れたママ友ふたりと出会った。ふたりは

「駅の近隣に住んでいて、何度か訪れている。子どもたちがつば九郎のファンなので、こういったスペースはありがたい」

と語っていた。より多くの人たちに鉄道への親近感を抱いてもらうためにも、鉄道各社は地域と協働して、こうした交流スペースを増やしてほしい。

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