ビッグモーター民間車検「指定取り消し」が業界に落とした大きな影 日本の「性善説」はもはや消え去ったのか、罰則強化で本当にいいのか? という根源的な問い
ビッグモーター宇都宮南店に併設された整備工場が関東運輸局により行政処分を受けた。このタイミングでしっかりと対策を行わないと、民間車検制度に対する信頼はさらに低下を続けるだろう。
民間整備工場への委託は1962年から

現在の車検制度ができたのは、1951(昭和26)年である。目的は国内で登録されている自動車の安全性を高めることだ。
当初、全ての車検は全国の車検場で実施されていた。しかし1960年代初めからの高度経済成長時代に国内登録車が大幅に増加。それにより、車検場だけでは必要とされる車検の全てを短期間でこなすことが困難となった。
そこで1962年から導入されたのが、一定の設備を備えた民間整備工場に車検の委託を可能とする民間車検場制度だった。
民間車検場制度の創設によって、車検場の業務は軽減され、車検に要する時間も短縮された。結果的にユーザー側の利便性も増した。しかしその一方で、規定にのっとって厳正に行わなければいけない車検において、手抜き行為という
「不正の温床」
となったことも否めない。今回のビッグモーター問題に限らず、過去から現在まで不正車検は常に自動車業界全体の問題として認識されている。
高まる民間車検制度への不信感

さて、今回のビッグモーターの件はどのような問題を内包しているのだろうか。
一般に不正車検といっても、その内容はさまざまだ。単なる手違いでの作業ミスもあれば書類ミスもある。ここで重要なのは、うっかりミスだったのが故意の不正だったのか、また単発的なものだったのか、継続的なものだったのかである。
ビッグモーターの場合だと、その内容は明らかに故意だ。かつ継続的で、全国のチェーン店に波及していたという意味では極めて悪質だ。こうなると、車検を依頼するユーザー側の心理として、「他の会社はどうなのか」という疑心暗鬼にとらわれるのは仕方のないことだ。すなわち、
「民間車検制度そのものに対する不信感」
が増したということである。