京都の「観光公害」全然止まず 市バス“すみ分け”対策検討も、運賃引き上げ懸念に観光客「不当な差別」の声

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京都市は公営バス制度の各種規制の柔軟な運用を求める要望を国へ提出した。「観光公害」の再燃で市バスの混雑が深刻化してきたためで、観光と生活利用ですみ分けを検討する。

有名観光地行きのバスが大混雑

四条高倉バス停で祇園へ向かうバスに乗り込む観光客ら(画像:高田泰)
四条高倉バス停で祇園へ向かうバスに乗り込む観光客ら(画像:高田泰)

 京都市は公営バス制度の各種規制の柔軟な運用を求める要望を国へ提出した。「観光公害」の再燃で市バスの混雑が深刻化してきたためで、観光と生活利用ですみ分けを検討する。

 梅雨空に晴れ間が見えた、京都市下京区の京都駅烏丸口。国内外の観光客が市バス待ちの長い列を作るなか、手押し車の女性が乗車の順番を待っていた。聞けば、歩いて約15分の場所に住む80代の年金生活者だそうで、15分ほど列に並んでいるのに、市バスに乗れない。

 この日は駅前で買い物をして自宅へ帰る途中だという。手押し車にはデパ地下で買った総菜が入っていた。女性が乗る205系統の市バスは中京区と下京区にまたがる繁華街の四条河原町や北区の観光名所・金閣寺へ向かうため、観光客が殺到する。

「少し前なら歩いて帰ったけど、今は足がいうことを聞かない。我慢して待つしかない」

と苦笑した。

京都市、国に「柔軟な制度運用を」

京都駅前で連日見られるバス待ちの長い列(画像:高田泰)
京都駅前で連日見られるバス待ちの長い列(画像:高田泰)

 コロナ禍が一段落し、外国人の入国制限が緩和されて以降、京都を訪れる観光客が増えている。右京区の嵐山や東山区の清水寺、祇園など観光名所は連日大にぎわい。観光客の多くが700円で乗り放題のバス1日券で市内を回ろうとするため、市民の足となるはずのバスが混雑し、コロナ禍前に近い光景が繰り返され始めた。

 下京区の四条高倉バス停では、東山区の祇園へ向かうバスがほぼ満席でやってきた。地下鉄からバスに乗り換えようとした観光客が乗り込むと、なかはすし詰め状態に。うんざりした表情で乗車をあきらめ、キャリーケースを引きずって歩き始める外国人観光客もいた。

 近くのコンビニ店主は

「コロナ禍の間、街は静かだったのに、またいつかの光景が戻りつつある。こんな混雑を目にしたら、市民はこの辺りで市バスに乗ろうなんて思わない」

とあきれたような口ぶりで話した。

 この状況を打開するため、市は公営バス制度の各種規制の柔軟な運用を求める要望を国土交通省と総務省へ提出した。このままではコロナ禍前と同様の「観光公害」になりかねないと危惧したからだ。

 具体的な対策の検討はこれからだが、京都市交通局は

「市バスの混雑解消は最優先課題。観光利用と市民の利用をすみ分け、市民が安心して利用できるよう制度の柔軟な運用を国交省と総務省にお願いした」

と述べた。

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