「ヘルメット」で済むなら警察いらない? 交通事故防止で本当に必要なのは「自転車レーン」だ
世界的に珍しい日本の「自歩道」

2023年7月から、特定小型原動機付自転車(原付)という新しいルールが導入されることで増加が予想される電動キックボードについても、同じことがいえる。
「日本は狭い国なので自転車道や自転車レーンを作るのは難しい」
と、反論する人がいるかもしれない。しかし世界的に有名な自転車先進国であるオランダの国土面積は日本のおよそ9分の1にすぎない。しかも人口は約1750万人なので、人口密度は日本を上回っているのである。
そのオランダでも、自転車事故による犠牲者の増加に悩んだ時期があり、ヘルメット着用義務が議論に上がったものの、それよりも走行環境整備が大事という意見が多く、ヘルメット着用は任意のまま、走行空間の整備が進んだという経緯を聞く。
一方の日本は高度経済成長期に自動車が増加し、自転車事故が増えた際、一部の歩道を走っても良いという、世界的にも珍しいルールを導入した。いわゆる自歩道(自転車歩行者道)だ。
青い円の中に歩行者と自転車を描いた交通標識は、今なお多くの道路で見かける。その結果、欧州ではあまり問題にならない、歩行者と自転車の接触事故が多数発生している。自転車マナー悪化の原因のひとつも、この曖昧なルールにあると感じている。
日本の「自転車はなんでもあり」

例えば、全国の交差点に増えつつある歩車分離式信号では、自転車は車両なので、車道を走るときは自動車の信号が青のときに進むことになるのだが、自歩道を走ってきた自転車は、逆に歩行者の信号が青のときに交差点を渡ることになる。
つまり、走る場所を変えることでいつでも交差点を通過できることになる。このルールが、
「自転車はなんでもあり」
的な考えを生んではいないだろうか。
とにかく、日本の自転車インフラは世界的に見れば例外的であり、欧米などでは自転車走行空間の整備が、急ピッチで進んでいる。
筆者(森口将之、モビリティジャーナリスト)が訪れる機会の多いフランスのパリでは、2021年時点ですでに1000kmの長さを誇る市内の自転車レーンを、さらに450km延長するとともに、駐輪場などの整備を、2.5億ユーロ(350億円。1ユーロ140円換算)もの予算をかけて行うとしている。