トヨタ・ダイムラー提携も、「対等性」に固執する必要なし? 今こそダイムラークライスラーの失敗に学ぶときだ

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日野と三菱ふそうの経営統合。そこに秘められた課題とは何か。

ブランド統合と市場戦略

2022年度地域別販売台数。日野自動車の2023年3月期決算説明資料より(画像:日野自動車)
2022年度地域別販売台数。日野自動車の2023年3月期決算説明資料より(画像:日野自動車)

 さて、ここからは今回の経営統合に関わる課題3点について考えてみよう。

 S&Pグローバルモビリティの調査による2021年の中大型トラック販売台数は

・1位:中国第一汽車(中)37万5188台
・2位:ダイムラー・トラック(ドイツ)36万5597台
・3位:中国重型汽車(中)30万5478台
・4位:東風汽車(中)28万2056台
・5位:トレイトン(ドイツ)25万1576台

で、日野自動車は15万6473台となっている。

 日野ブランドをダイムラーブランドに統合すれば世界1位に返り咲くことができるため、ダイムラー・トラックはこの「足し算効果」を狙う可能性は十分ある。

 日野は、北米、欧州、中南米等グローバルに商品展開しており、インドネシアを中心にアジアでの販売が好調だ。ダイムラー・トラック最高経営責任者(CEO)のマーティン・ダウム氏は、4社共同会見で

「新たな会社は東南アジアで大きな力を発揮し、ダイムラー・トラックファミリーの重要なパートナーとなる」

と、日野ブランドへの期待を述べている。

北米・欧州に弱い日野

日野は適切な市場と商品の選択で事業再編も狙う。日野自動車の2023年3月期決算説明資料より(画像:日野自動車)
日野は適切な市場と商品の選択で事業再編も狙う。日野自動車の2023年3月期決算説明資料より(画像:日野自動車)

 逆に、日野は電動化が加速する北米や欧州での存在感が薄い。

 ダイムラー・トラックは北米でメルセデス・ベンツグループ内製の電動パワートレーンを利用した電動化を積極的に進めている。

 今回の経営統合により、ベンツグループの電動パワートレーンを日野が利用することが可能になる。

 このように、地域別の部品・システム共通化やブランドの再構築による事業再編は日野自身も決算説明会で言及している。

信頼回復と品質管理

「量」を追う経営からの脱却。日野自動車の2023年3月期決算説明資料より(画像:日野自動車)
「量」を追う経営からの脱却。日野自動車の2023年3月期決算説明資料より(画像:日野自動車)

 日本企業同士であっても、企業文化・風土の違いによる品質問題の発生が懸念される。日野だけではなく、MFTBCも2004(平成16)年に重要部品のリコールを行っている。

 日野は2023年3月期決算説明で、エンジン性能試験の不正問題の再発防止の一環として

「経営戦略の焦点を量から質へと移す」

ことを宣言した。

 親会社のトヨタは2014年3月期の決算説明会で

「意志ある踊り場」

という表現で、数を追わず、品質問題への対応や将来の成長に向けた技術の種まきへの余力を確保するという戦略を実行しており、日野もこの戦略を踏襲したと見られる。

 開発や製造工程における品質確保の仕組みを構築し、持続的な活動に落とし込むことで、顧客や市場からの信頼を回復することが両社にとっては最優先事項だ。

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