半導体産業の危機 「台湾有事」がもたらす6000億ドルの被害リスクと、在留邦人の帰国問題
台湾有事を巡る当事者間たちの緊張の長期化により、台湾社会でも有事を見据えた動きが進んでいる。また、企業の台湾情勢への懸念も広がっている。
サプライチェーンへの脅威

もうひとつが「モノの安全」だ。
世界の半導体業界における台湾の存在感はピカイチだが、それに限らず、台湾を主要な取引先、調達先とする日本企業も多い。また、台湾有事となれば、その影響は台湾国内だけでなく、中国軍が制空権や制海権の掌握に出てくるとも言われるなか、日本のシーレーンなどにも大きな影響が出ることが想定される。
例えば、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)を結び、直行便は台湾周辺を飛行ルートとし、中東やASEANなどから日本へ向かう石油タンカーや民間商船は南シナ海からバシー海峡、台湾東部を航行するので、場合によってはフィリピン上空や周辺海域などの迂回ルートを余儀なくされるだろう。
そういった物資の安定的供給(サプライチェーン)が脅かされることへの懸念を現実問題として企業は受け止め始めている。特に台湾有事を巡っては、ヒトの安全よりモノの安全の方が回避策が難しいため、
「代替手段がない」
と悩む声も今日かなり聞かれる。
現在、世論で台湾有事が叫ばれるなかで、“脱台湾”で実際に行動に出ている企業は筆者周辺では見られない。しかし、台湾情勢を巡って企業関係者の間で懸念の声が広がり、ヒトの安全やモノの安全を心配し、それへの対策を積極的に検討する、検討し始める企業が増えていることは事実である。
今後も緊張は長期化することが予想され、企業の台湾情勢への懸念はいっそう広がるだろう。