大都市駅前に立地する「そごう」の軌跡 不動産業化する百貨店に未来はあるのか? 昭和ノスタルジーはもはや通用せず
百貨店は不動産業から脱せられるか

その後、千葉都市モノレールの千葉駅開業(後にJR千葉駅と連絡通路で接続)に伴い、1993(平成5)年には駅直結で6万平方メートルを超える新店やSOGOコリドーモールなどがオープンした。横浜そごうの6万8000平方メートルに続く巨艦百貨店であり、このオープンは大きな話題となった。旧そごう、旧別館もリニューアルし、JR千葉県駅周辺は広範囲にそごうが陣取る形となって、まさに千葉の顔になったと言える。
新店では広大なフロアを海外ブランドショップで埋め、最上階のフロアをすべて高級レストランにしたり、巨大なオブジェを設置したり、今思えばかなりぜいたくな使い方がされた。千葉そごうに限らず、当時の駅前百貨店はその都市のステータスを担うものであったと言える。
しかし、この時期にはすでに駅前立地のプライオリティは揺らぎ始めていた。モータリゼーションの発達とともに1990年代に入ると商業施設開発の軸足は郊外エリアになる。
ロードサイドやIC近くの大規模なリージョナル型SCにマーケットは大きく吸い上げられ、都市中心部の空洞化が進展、駅前立地の求心力は低下していった。駅前百貨店は次々に撤退し、地方中心都市のなかには百貨店のない都市も出てくる。千葉そごうも当初のゴージャスさは消え、買いやすいテナントが入居するSC的な百貨店となっていった。
近年はタワーマンション開発などによって人口の都市回帰があり、さらにインバウンドも増加していることから、地域の拠点となる駅前立地の価値も変化してきている。東京都心ではシティツーリズムの観点からも、新たなプレーヤーによる商業業態開発が活発化している。
日本文化を取り入れた店舗や話題性の高い店舗をとりそろえ、さらに心地の良い屋上庭園や、劇場や映画館といった文化機能を導入するなど、かつての百貨店をほうふつとする内容となっている。百貨店が新たな業態に生まれ変わる事例も増えている。
そごうの位置する駅前立地のポテンシャルは今後も高い。本来ならば新たな業態として生まれ変わることが期待されるが、地域の一等地ゆえに従来の手法でも通用している部分もあるのだろう。
しかし、これからは既存テナントの床負担力の低下も予想される。膨大な流入のある東京都心だからこそ新業態開発が可能とも言えるが、これからは地方都市のマーケットに即し、新たな価値を持つ商業業態が開発されることが望まれる。
百貨店が不動産業となってしまっている現状では難しいことかもしれないが、本来の百貨店が持っていた求心力への回帰に期待したい。