北海道「タマネギ列車」が維持困難路線で今なお存続しているワケ トラック並走なのになぜ?
「タマネギ列車」の愛称を持つ貨物列車が、北海道の石北本線を走っている。その存在は、路線の維持にも関わっている。
1世紀にわたる「マイレール」

「片荷輸送」の解消のため、農産物の鉄道輸送を担うホクレンは2020年から、北見地区に向け、追肥として用いられる「硫安肥料」を北見行き「タマネギ列車」で輸送している。以前は工場のある山口県から釧路港までフェリーで輸送されてきたもので、運賃も船便と同水準を維持できた。
こうした地元の取り組みは、単に「タマネギ列車」の運転継続にだけ貢献しているのではない。石北本線の存廃論議にも影響を与えている。
石北本線が2016年に「単独維持困難線区」に指定されて以来、「オホーツク圏活性化期成会」は沿線を挙げて利用促進に取り組み、観光列車の「おもてなし」や、特急列車での名産品販売などで貢献している。
地元関係者の話では、この「反応の早さ」は「タマネギ列車」の存廃論議の経験があったからであり、さらにいえば、北見~池田間のローカル線「北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」が2006(平成18)年に廃止された「苦い経験」を共有しているからだという。
およそ100年前、建設予定だった石北本線が、関東大震災に端を発する不景気のあおりを受け着工延期とされた際、地元の人々は「鉄道がなければ、特産の農産物も売れない」と、東京の政官界へ陳情した。その時の手弁当が特産のカボチャだったことから「カボチャ陳情団」と称された。それ以来、1世紀にわたる「マイレール」の意識が今も息づいており、「タマネギ列車」の存続にもつながっているのだ。