長野、熊本、石川で「第二の人生」 東京メトロ03系が地方鉄道で“引っ張りだこ”のワケ

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東京メトロ日比谷線で活躍していた「03系」電車が近年、地方私鉄に譲渡され、再び地域の足として走っている。「03系」がなぜ地方で重宝されるのか、解説する。

メンテナンスのハードルも越え

東京メトロ03系電車(画像:写真AC)
東京メトロ03系電車(画像:写真AC)

 今回、長野電鉄に譲渡されたのは、東京メトロ03系の中でも初期のタイプで、1989(平成元)年~1990年に製造された車両である。最後に製造されたグループに比べると、4~5年古い。しかし、今回の譲渡車両は初期型でありながら、2012~2015年に制御装置が更新されたもので、走行機器は新品同様になっているのだ。

 03系の車体はアルミ製で、前述したステンレス車体と同じように、鉄製の車体と比較して腐食に強いとされる。数年程度の車体の古さよりも、走行による老朽化が出やすい「足回り」の新しさを取った結果であり、長く使うために妥当な選択だったといえるだろう。

 更新された制御装置は、「VVVFインバーター方式」というもので、インバーターを介して交流モーターを自在に回転させる仕組みである。消費電力などで有利である一方、構造が複雑で、故障などの際にはメーカーに頼らざるを得ない。かつては、抵抗器を用いた「抵抗制御」が主流で、構造が単純ゆえ自前のメンテナンスが可能であるため、地方私鉄では近年までVVVFインバーター方式を敬遠し、抵抗制御を使い続ける傾向があった。

 しかし、VVVFインバーター方式が主流となって30年ほどが経過し、メンテナンス態勢もより整ったことにより、地方私鉄でもこれを導入する例が相次いでいる。長野電鉄の今回の譲渡も、こうした技術的なハードルが取り払われた結果ともいえるだろう。

 アルミまたはステンレスの小柄な車体、そしてVVVFインバーター制御。扱いやすいサイズの車体と、最新式の走行機器を持つ東京メトロ03系が、中古車両によって在来車両を刷新したい地方私鉄にとって「またとない出物」といわれるゆえんである。

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