長野、熊本、石川で「第二の人生」 東京メトロ03系が地方鉄道で“引っ張りだこ”のワケ

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東京メトロ日比谷線で活躍していた「03系」電車が近年、地方私鉄に譲渡され、再び地域の足として走っている。「03系」がなぜ地方で重宝されるのか、解説する。

「手頃」な短い車体

長野電鉄3500系電車(画像:写真AC)
長野電鉄3500系電車(画像:写真AC)

 まず、03系の大きな特徴として、車体の長さが短いことが挙げられる。JR在来線や大手私鉄の車両の大半が全長20mであるのに対し、03系は18mと短い。これは、日比谷線が開業した1960年代は現在に比べ、17~18m級の車両がより一般的だったことや、同線の旅客需要、さらに半径130m未満の急カーブが複数箇所ある、といった複数の理由がある(03系の代替となった日比谷線の新車は20mとなった)。

 この短い車体は、地方私鉄にとって「手頃」と映る。急カーブを通過しやすい特性はもちろん、重量も20mに比べ軽く、線路や橋梁(きょうりょう)への負担が少なくて済むことや、ラッシュ時の混雑度が大都市部に比べれば低く大型車両を必要としないなど、地方私鉄にとって「大きすぎない車体」は格段に有利なのである。

 03系のように、複数の私鉄から引っ張りだこだった車両は、過去にも例かある。

 東急5000系(初代)は1980年代、実に64両も譲渡され、長野電鉄、福島交通(福島県)、岳南鉄道(現岳南電車、静岡県)、熊本電気鉄道、上田交通(現上田電鉄、長野県)、松本電気鉄道(現アルピコ交通、長野県)で活躍した。

 同じ東急7000系(初代)も1980~1990年代に弘南鉄道(青森県)、北陸鉄道、水間鉄道(大阪府)、福島交通、秩父鉄道(埼玉県)に70両以上、東急1000系も2000~2010年代に上田電鉄、伊賀鉄道(三重県)、一畑電鉄(島根県)、福島交通へ20両以上が渡っている。

 どの形式も18m台の全長で、中でも東急7000系や東急1000系はステンレス車体であることから腐食にも強く、メンテナンス面でも有利に働いた。

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