エックス線で手荷物検査! 鉄道に「飛行機なみのテロ対策」を導入したヨーロッパの深刻事情

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近年は日本でも、鉄道でのテロ事件への警戒が強まっているが、海外の事情はどうなのだろうか。ヨーロッパ各国の対策を紹介する。

手荷物検査で「気軽さ」犠牲に

ブリュッセル南駅のユーロスター入口。自動改札の後にX線検査を行う。駅というよりは空港に近い(画像:橋爪智之)
ブリュッセル南駅のユーロスター入口。自動改札の後にX線検査を行う。駅というよりは空港に近い(画像:橋爪智之)

 テロへの対策という話をする前に、まず、ヨーロッパの多くの国で、駅構内へ入るための改札口が存在しない、という点について話さなければならない。日本の状況と大きく異なる点で、別にチケットを持っていなくても、簡単に駅構内へ入り、プラットホームに停車する車両に乗り込むことができる。

 ヨーロッパの駅ではスリに気を付けろ、とよく注意されるが、テロリストのみならず、泥棒だろうがホームレスだろうが、誰でも簡単に入ることができてしまうのだ。実に基本的な話となってしまうが、まず誰でも入れるという状況をなくすため、最近のヨーロッパでは改札口を設ける国も徐々に増えてきた。

 監視カメラの設置は、かなり早い段階で速やかに行われ、現在は高速列車などの優等列車のみならず、近郊列車や地下鉄、トラム、さらには路線バスにも設置されており、監視カメラのない交通機関を探す方が難しいと思えるほどだ。監視カメラも万全ではないが、ある程度の抑止力にはなるということ、それに痴漢への対策という意味でも効果があることから、日本でも早急な設置拡大が求められる。

 とはいえ、改札口設置や監視カメラだけではテロの防止対策としては不十分だ。そこで乗車する前に、空港と同様のエックス線検査機を導入したのが、スペインの高速列車AVEと英仏間を結ぶユーロスターだ。乗客はプラットホームへ入る前に、待合室の手前で手荷物検査を受けてから改札内へ入ることになる。セキュリティー対策としては万全だが、鉄道の売りである「気軽さ」はなくなり、駅へも早めに行く必要がある。実際、ユーロスターは発車30分前に改札が締め切られ、出発時刻前に駅へ着いても、乗車できない場合がある。

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