下請けイジメ横行の運送業界 価格交渉すれば「代わりはいくらでもいる」と嘲笑、経産省「価格転嫁調査」でわかった“美しい国”ニッポンの現実

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下請けの中小企業が発注元の大手企業から価格転嫁されていないか、価格交渉に応じてもらえているかの調査結果が経済産業省の中小企業庁から公表された。

「さらしもの」だけでは解決しない

中小企業のイメージ(画像:写真AC)
中小企業のイメージ(画像:写真AC)

 しかし、大手宅配業者にも厳しい現実がある。

 同様に「ウ」ばかりの企業は製造業など他業種にも複数あり、こうした企業の物流や配送のコスト上昇分を転嫁されているという実態もある。

 また日本郵便のイメージが突出して悪い結果となったが、日本郵便は小泉純一郎内閣の「聖域なき構造改革」によって解体された日本郵政公社のなかで

「一番もうからない」

とされた普通郵便の仕事を担っている。63円の通常はがきで北海道から出して沖縄まで届く。封書に切手1枚で山の中でも離島でも届く。当たり前の話と思うかもしれないが、その当たり前を被っているのは日本郵便である。

 郵便料金は自由にできない上に基本、各種事業も入札による調達制である。民営化で「さあ自分で稼げ」と言われたのに日本中どこでも決められた切手の額で配達させられる。ゆうパックをいくら運んでも、カタログギフトをいくら売っても普通郵便143億2982万通(2021年度)の配達が重くのしかかる。

 国は評価の良くない30社あまりを指導、是正するとし、西村康稔(やすとし)経済産業大臣は

「日本の雇用の7割を占める中小の賃上げ」

を後押ししたいと述べた。

 今回の大手企業と下請け各社に対する価格転嫁および価格交渉の実態調査と公表は、いわゆる物流の2024年問題に向けても意義のある活動だと思う。しかしさらしものにして指導するだけでこの日本が長年抱える構造的問題が解決するとは思えない。

 やり玉に挙げられた「ウ」や「エ」の企業同様、自由化の名のもとにこのいびつな構造を作り出した国もまた、この調査結果をもって反省のきっかけとしなければならないだろう。

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