「先頭の合流 = ズルい」なんてまだ言ってるの? 誤解された「ファスナー合流」、実は渋滞減らすメリットがあった

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「ファスナー合流」、あるいは「ジッパー合流」と呼ばれるクルマの交通方法がある。すべてのドライバーに共有されれば、渋滞が緩和されるこの方法を解説する。

渋滞損失時間、3割減

渋滞する道路(画像:写真AC)
渋滞する道路(画像:写真AC)

 しかし、ファスナー合流をするだけで(1台1台が交互に合流するだけで)本当に渋滞が緩和できるのだろうか。先述したNEXCO中日本のケースを参考に見てみたい。

 このケースでは、ファスナー合流を促すために、渋滞の原因となっている地点(一宮JTC付近・E1名神上り線)にて、本線と側道(加速レーン)を区切っているラバーポール(道路上に一定間隔に直立している、赤に白のしま模様のポール)区間を延ばすことにした。これによって、側道からの合流は側道(加速車線)先端に限られることになった。

 実はこの「合流は加速車線先端で」というのも、ファスナー合流実施のポイントである。仮に「加速車線のどこからでも本線に合流可能」としてしまうと、本線は側道からの合流の車を不規則に受け入れることになる。だが合流するポイントを「加速車線先端」と限定しておけば、不規則な合流を制限して「1台ずつ交互に」が実現しやすくなる。

 また、冒頭で「ファスナー合流を知っておくだけで、イライラが軽減する可能性がある」と書いた。これはつまり、合流を受け入れる側、すなわち本線を走行するドライバーについての話である。

 ファスナー合流を知らなければ、加速車線の先端部分で合流してくる車を、「渋滞に巻き込まれる距離を少しでも減らそうと、自分本位な運転をしている」と不愉快に思うかもしれない。しかしファスナー合流を知っているだけで、加速車線先端部分からの合流を「ファスナー合流だ」と素直に受け止めることができるのである。

 話をNEXCO中日本のケースに戻すが、合流地点のラバーポール区間の延伸を行ったところ、渋滞損失時間をなんと3割も減少させることに成功したという。

 車が交互に1台ずつ合流する工夫を施すだけで、渋滞がここまで緩和できるのだから驚きだが、それだけの効果を上げることができる「ファスナー合流」なる一工夫、ぜひともさらに浸透してほしいと願わずにはいられない。

 現在進行形で浸透しているファスナー合流だが、ファスナー合流を実践している日本の道路の1シーンを紹介した動画が注目され、海外から称賛の声が集まっているようだ。「素晴らしい交通マナー」「これをまねするべきだ」といった反応に、日本人としてはひそかに鼻高々だが、国内におけるファスナー合流は、まだまだ伸びしろがある。その点がさらに楽しみに思われる。

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