不透明な北陸新幹線の延伸問題 環境影響評価の遅れは「工事強行のアリバイ作り」ではないのか

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北陸新幹線大阪延伸工事の2023年度当初の着手が断念された。京都府内で環境アセスメントが遅れているためだ。新幹線工事の壁になっているのはどんな地域なのだろうか。

ルートは自然豊かな山里を通過

京都府南丹市美山町の風景(画像:写真AC)
京都府南丹市美山町の風景(画像:写真AC)

 美山町は周囲を三国岳など標高800~900m級の連山に囲まれ、町域約340平方キロメートルの約9割を山林が占める。福井県の若狭地方と京の都を結ぶ鯖(さば)街道が古くから通り、美山川沿いに集落が点在する。2006年に園部町、八木町、日吉町と合併して南丹市となった。

 美山町の人口は合併当時、5000人余りを数えたが、今は4000人を下回っている。65歳以上の高齢者が半数近くを占め、高齢化も深刻さを増すばかり。南丹市美山支所は

「移住者の獲得に力を入れているが、人口減少と高齢化に歯止めがかからない」

と頭を抱えている。多くの地域を支えているのは、豊かな自然を求めてやってきた移住者だ。

 南丹、京都、綾部3市と京丹波町にまたがる京都府内の丹波高原約6万9000haは2016年、京都丹波高原国定公園に指定された。環境省が貴重な自然保護に動いたわけだが、直後に北陸新幹線の大阪延伸ルートに決まった。北陸新幹線は山を掘削したトンネルで通過する見通し。工事が続けば環境への影響は避けられそうもない。

 北陸新幹線の延伸工事がはらむ問題に気づき、いち早く動き始めたのは、ルート通過の可能性がある田歌地区だった。田歌地区は地区内を美山川が流れ、住民約60人のうち、半数を移住者が占める典型的な過疎の山里だ。

 工事を担当する鉄道建設・運輸施設整備支援機構が2019年に開いた説明会では、生態系への影響やトンネル掘削で出る膨大な残土の処分方法などについて地区の懸念を消せなかった。このため、翌2020年に対策委員会を立ち上げて全戸一致で環境アセスメント受け入れ保留を決めた。

 この動きは近隣の他地区に広がっている。芦生(あしう)の森がある芦生地区は2022年春、総会で反対決議を採択した。近隣でトンネル掘削が続けば、芦生の森に影響が出ると判断したためだ。北地区の北村かやぶきの里保存会も2021年、計画の白紙撤回を求めることを決めている。3地区には自然が失われれば移住者が絶え、地区を存続できなくなる不安もあるという。

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