「観光バスツアー」はオワコンか、はたまたナウいのか? コロナ不況で注目される、参加費「1万円以下」というコスパぶり
業界はかつてないほどの危機

その先駆となったもののひとつに、はとバスの女性限定「夜の街体験ツアー」がある。これは、ホストクラブやニューハーフのショーパブへのツアーだ。興味があってもひとりで行くには敷居が高い場所だが、大人数で行けば怖くない感覚をうまくつかんだものと言える。このツアーは話題となり、多くのメディアに取り上げられたことから、その後も特別な体験に特化したツアーが増えることになる。
食を重視したツアーも増加した。これは、メインターゲットである中高年や女性が食に関心が高いことを反映している。すしや海鮮浜焼き、スイーツなどの「食べ放題」や、観光農園でのフルーツの「取り放題」、信玄餅などの銘菓やパン、野菜などの「つめ放題」など。これらをこれでもかとツアーに盛り込んでいる。
パンフレットのなかから選択されるためにはキャッチ―なコピーが求められ、食欲や物欲をより刺激する内容になるのだろう。最近はSNS映えするスポットと食べ放題を合わせたツアーが人気上位にあり、今の季節だとイルミネーションと食べ放題のパックが多い。また、歴史探訪など知的好奇心を刺激するツアーも見られ、さらに内容が多様化してきている。
利用者も従来の中高年だけでなく、幅広い層に拡大している。近年は若者の車離れが言われているが、自家用車を持たない若者が増えるなか、改めて観光バスをお得なツアーとして評価する若者も増えている。カップルで利用する若者もいて、一昔前の観光バスのイメージから変化していることがうかがわれる。また、おいらんショーなど日本情緒を味わえる場所を巡るオプショナルツアーとして、急増するインバウンドの利用も期待されていた。
しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大によって、観光バスも他の観光産業と同時に深刻な打撃を受けている。観光産業に従事する交通事業者のなかでも観光バスは経営体力のない中小企業が比較的多く、経営への影響は特に大きかった。
外出自粛によって事業の柱となる修学旅行や社会科見学などの学校団体需要は消失状態に、期待されていたオリンピック需要も結局、無観客試合となった。さまざまな支援金を投入しても、収入の見通しがつかないなかで維持費は大きな負担となっており、観光バス事業を断念する企業も増えている。業界はかつてないほどの危機なのだ。