交通系ICカード「一強時代」の終焉か 鉄道・バスにQRコードやクレカ決済が導入される、実に明白な理由
タッチ決済が鉄道にやってきた

クレジットカードのタッチ決済は、少しずつ広がりを見せている。タッチ決済に最も力を入れているのは、京都丹後鉄道である。2020年11月に日本で初めてVisaのタッチ決済を導入し、交通系ICカード導入の際の高い費用を回避し、一方で距離制運賃でもタッチ決済が可能ということを示した。
交通系ICカードは、都市部での導入が多く、地方部はまだ現金決済が主流だった。一方で、クレジットカードは比較的普及が進んでおり、すでに多くの人が利用するようになっている。そこで、京都丹後鉄道では、交通系ICカードを利用者に購入してもらうのではなく、利用者が持っているキャッシュレス手段を使用するということで、利用者に寄せたサービスを提供することになった。
南海電気鉄道もタッチ決済に熱心だ。実証実験を何度か繰り返した上で、2023年度から順次各駅の自動改札をタッチ決済対応にする。
南海は関西国際空港のアクセス鉄道となっている関係上、外国人利用者も多く、インバウンド利用なども想定してこのようなシステムを設けた。南海グループの泉北高速鉄道などでも導入する。
JRでもタッチ決済の利用は始まりつつある。JR九州では、鹿児島本線の5つの駅でVisaだけでなく、American ExpressやJCBのタッチ決済を含めた実証実験を開始する。複数の国際ブランドでのタッチ決済、特に日本発の国際ブランドであるJCBのタッチ決済も使用できることで、利用者の幅を広げていくという狙いがある。
関西や九州で普及し始めた鉄道のタッチ決済導入が、関東圏でも始まる。
東急電鉄では2023年夏から、Visaをはじめとしたタッチ決済の実証実験を開始する。田園都市線を中心とした各駅で開始し、翌2024年春に東急線全駅を対象に実施する予定である。東急は交通系ICカードを主軸としながらも、世界の主要国で広がっているタッチ決済を導入することで訪日外国人などの利用を見込むという。
交通系ICカードが普及していない地域から、コロナ禍終了後のインバウンド需要回復を見込んでの導入へと、タッチ決済を導入する側の意図は広がりを見せるようになっている。
コロナ禍前までは日本に外国人観光客が押し寄せていた。外国で販売されている日本のガイドブックには、交通系ICカードの購入を勧める記述があり、また訪日外国人向けの交通系ICカードも販売されていた。タッチ決済は、交通系ICカードだけでは届きにくい層にも、鉄道のキャッシュレス利用を便利なものにするという利点がある。