トヨタ・マツダはロシア撤退 ホンダは台中懸念でサプライチェーン再編、自動車企業を取り巻く終わりなき地政学リスク
国内回帰の動きも

一方、「ロシア・ウクライナリスク」のように有事には至っていないものの、潜在的リスクがある「台湾・中国リスク」を懸念する企業の数は増えている。例えば、日立製作所の河村芳彦副社長は10月下旬、台湾有事やそれによって悪化する恐れがある日中関係などを念頭に、中国や台湾を巡る地政学リスクに懸念を示し、サプライチェーンの拠点を国内や同盟国へ移すことを検討していると明らかにした。
同氏は、価格重視のサプライチェーンに代わって、今後は安定性や継続性を重視する必要があり、中国との経済関係が深まる東南アジア諸国連合(ASEAN)だけでなく、中国との関係が薄い国々を含め検討していると述べた。
また、キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長も同様に、企業の経済活動が影響を受ける国々に生産拠点を放置できず、安全な第3国への移転か、日本に戻すかの2つの道しかないという認識を示し、工場の展開など時代に見合った体制に見直すべきとして、主要な工場を日本に回帰させる考えを明らかにした。そして、大手自動車メーカーのホンダは8月、国際的な部品のサプライチェーンを再編し、中国とその他地域のデカップリング(切り離し)を進める方針を発表した。
2022年、台湾を巡っては、中国との関係において、緊張が走る出来事がたびたび起きた。特に、8月のペロシ米下院議長の訪問により、台湾を包囲する形で軍事演習を行うなど、中国はこれまでない規模で軍事的威嚇に踏み切った。米中関係悪化だけでなく、蔡英文政権が米国など欧米諸国との結束を強化していることで、習政権の不満はかなり高まっているとみられる。
中国は軍事演習や経済制裁、サイバー攻撃などあらゆる手段を使って台湾に揺さぶりを掛けているが、今後は軍事演習のエスカレートによって偶発的衝突が生じ、緊張が一気に高まらないか懸念される。台湾有事となれば、それは日中関係のさらなる冷え込みをもたらし、日本のシーレーンの安定も脅かされる恐れがある。台湾有事に由来する日中関係の悪化など、2023年、企業はこの潜在的リスクを2022年以上に、真剣に検討する必要がある。