「トラクター = 野暮ったい」からの脱却 美しさと所有の喜びもたらしたデザイナー、レイモンド・ローウィをご存じか

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1930年代後半、トラクターという実用一点張りだった産業機械に対して、美しさと所有する喜びをもたらしたデザイナーがいる。その名はレイモンド・ローウィ。

「流線形」をトラクターに

1939年型インターナショナル・ファモールH。滑らかなラインを描くフロントからエンジンフード全体のデザイン、ロゴ類のレタリングも美しい。このモデルを最後にアメリカのトラクターは角張ったデザインが主となってゆく(画像:矢吹明紀)
1939年型インターナショナル・ファモールH。滑らかなラインを描くフロントからエンジンフード全体のデザイン、ロゴ類のレタリングも美しい。このモデルを最後にアメリカのトラクターは角張ったデザインが主となってゆく(画像:矢吹明紀)

 工業製品の外観デザイン、「インダストリアルデザイン」の分野において、デザイナー個人の名前が大きくクローズアップされるようになったのは、それほど昔のことではない。おおむね1930年代半ば以降である。この時代、家電製品やキッチン用品、日用雑貨などの市民生活に密着した物は、そのデザインを大きく変え、いわゆるモダンなルックスへと変貌した。

 同じ頃、工業製品の中でも主として乗り物分野においては、ニューモードとしての流線形が注目されることとなる。流線形は空力的な意味があった航空機をはじめ、自動車、鉄道車両、モーターサイクル、自転車など極めて広い範囲へと応用されてゆくこととなったのだが、その中に一風変わった流線形の工業製品があった。それはトラクターである。

 1939年、アメリカを代表する巨大農業機械メーカーだったインターナショナル・ハーベスタは、新時代のトラクターとしてインターナショナル・ファモールHを発売した。緩やかにラウンドしたラジエーター周りと、同じく丸みを帯びたエンジンフード。鮮やかな赤のボディーカラーとレタリングの細かい部分まで留意されたメーカーロゴ。トラクターという、まさに何の変哲もない実用一点張りだった産業機械に対して、美しさと所有する喜びをもたらしたデザイナーの名をレイモンド・ローウィといった。

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