鉄道・高速道路を「1日使い放題1000円」にしたら、旅行需要は甦るか? ドイツ成功事例にみる全国民を巻き込んだ一大施策とは
ドイツで行われた社会実験「9ユーロチケット」は大きなインパクトを与えたか、同じことは日本でも行えるか。
結局、旅行需要喚起に効果はあったのか

9ユーロチケットにより、通勤などを目的とした日常的な公共交通機関利用者は、もちろん家計的に助けられただろう。また期間中、ドイツ国内の鉄道は混雑を続け、かつ観光地も旅行客でごった返しており、エネルギー価格が高騰する中で旅行需要を喚起できた点においても、チケットの効果はあったように見える。実際、7月初旬にドイツ連邦統計庁が実施した携帯電話データ分析では、2019年と比較して
「全国の鉄道交通量が平均で42%増加」
した。
チケット購入者のうち27%は、今まで公共交通機関を利用したことがなかったとのVDVによる調査結果があり、期間中の公共交通機関を利用した移動の4分の1は、施策によりもたらされた需要だ。
また、VDVのアンケート調査によると、期間中チケット購入者の約10%が、少なくとも1回は自家用車ではなくバスまたは鉄道を利用しており、180万トンのCO2の削減に成功したとしている。
一方で、自動車から公共交通機関への移行はあまり多くはないとの指摘もある。例えばミュンヘン近郊で行われた調査では、確かに約35%が9ユーロチケット施策により鉄道やバスを頻繁に利用するようになったものの、自家用車を使わなくなった利用者はせいぜい3%にすぎなかったとのことだ。しかしながら、「3%ではほとんど効果がない」と見る専門家と、「3%でも効果はあった」と見る専門家で意見が割れている。
CO2の削減の効果は不明だが、公共交通機関の積極的な利用の促進、および旅行需要の喚起策としては、9ユーロチケット施策は十分機能したのではないか。