「戦闘機エンジン」に多大な影響も ガスタービンが自動車用に定着しなかったワケ

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自動車用動力としての実用化を目指し、さまざまなスタイルで技術的トライがなされたガスタービン機関。各国空軍の航空機から自動車へ、正解大戦を挟んで活用されたその軌跡をたどる。

高温の排気ガス、排気音がネックに

 クライスラー・タービンは生産された個体から順番に抽選で選ばれた合計203人の一般ユーザーの元に届けられ、1966年までというもの全米133の都市を舞台に日常走行を通じての実用性を探る実証実験が行われた。その間の総走行距離は160万km以上に達したと言われている。

 またメディアを対象とした試乗ツアーも頻繁に行われ、その中の1台はわが日本でもメディア関係者による試乗会に供された。

 これら試乗と実用実証実験の過程で、深刻なメカニカルトラブルが発生した例はほとんどなく、実用性に当たっての将来性はそれなりにあると評価された。

 一般にガスタービンエンジンは、急激な回転数の上下が難しいことから頻繁にスピードを変える自動車用エンジンにはマッチングが悪く、それを理由に実用化を断念したメーカーも多かった。

 しかしクライスラーはA-831と呼ばれていた自社製ガスタービンエンジンの熟成に務めた結果、そのドライバビリティに大きな問題はなかったと言われている。

 ただ、ガソリンエンジンとは比較にならないレベルだった高温の排気ガスは、大型の排気熱交換器を2基装備してもなお完璧な対策とはいえず、対歩行者への安全対策が大きな課題だった。加えて、エンジンの排気音も「大型の電気掃除機のようだ」と評されるなどユーザーからの反応は今ひとつだった。

 自動車としての走行性能はともかく、総合的な商品性能という意味ではまだまだ課題が残されたということである。

 クライスラー・タービンは、1966年に実証実験が終了すると55台生産された中の大半は破壊され廃棄された。資料として動態で保管されたのは3台、その他に走行不能な状態に改造されたスタティックディスプレイモデルが6台製作され、いくつかの博物館へと売却された。

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