宅配企業を直撃する「送料無料」の弊害 もはや宅配は商品のオマケに過ぎないのか?
運賃が距離で変動する仕組み

1370円と4万3850円――読者の皆さんはこの金額が何かおわかりだろうか。前者は、東京~北海道のヤマト運輸の送料(60サイズ)、後者は羽田~札幌(普通席)のJALの航空運賃だ。
宅配便は当初、これだけ安く、しかも自分の代わりに届けてくれるということで、利用者に喜ばれ、感謝されていた。しかしこれが常識となった現在では、便利さだけではなく、価格にさらなる要望が押し寄せている。そしてその都度、利用者と宅配企業がWin-Winとなるように作った運賃がいとも簡単に崩れている。
言うまでもなく、荷物が遠くに運ばれれば運ばれるほど、多くのスタッフが関わることになる。そのため、運賃は距離によって変わり、地域別の価格が設定されている。
「送料一律」という文字もよく目にする。東京への運賃と北海道への運賃が同じだと、北海道の荷物のハキダシ(運賃から経費を引いた利益)が割れてしまう。そのためには、どこかで帳尻を合わせないとならない。
取り扱い個数に比例しない賃金

図は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」に掲載されたトラック運転者の年間所得額の推移だ。2020(令和2)年度は、コロナ禍の巣ごもり需要で宅配便が急増した。そして、同年度の宅配便取り扱い個数も、前年比111.9%で過去最高の取扱量となっている。
しかし、図にあるようにトラック運転者の年間所得額は横ばいだ。これは、低単価な送料が招いた結果である。具体的には、今までの1個配達分のインセンティブが、現在は3個配達しないと、かつての1個分を賄えない状態になっている。労力が増えたが賃金は増えない理由だ。
数年前、ヤマト運輸では適正な運賃を求めて低価格荷主に値上げを断行したが、現在は元に戻り、インターネット通販の荷物がないと成り立たない状態になっている。そのしわ寄せは、現場のドライバーや下請け業者へと向かう。
また、現状でさばききれない荷物は、コロナ禍で急激に増えた個人貨物事業主やギグワーカーに流れていく。コロナ禍で職にあぶれた人の受け皿となっているが、外注費がかさんで経営を圧迫しかねなない。宅配企業にとってインターネット通販は、今や切っても切り離せない存在で、企業の行く末を握られていると言っても過言ではない。