物流コスト高騰! なんとバブル期比110%も、経営者の怠慢で荷主「ノーリアクション」の現実
営業との連携による物流コストの削減

チラシやポスターといった販促品の制作を主とする印刷会社のB社は、「朝一での納品」を基本としていた。B社の営業マンいわく、「お客さまが朝一での納品を求めているから」である。それゆえ、明け方から20台ほどのトラックが動き出し、昼前には待機所に戻ってくる。大半のトラックは午前中の数時間しか稼働していなかったのである。
筆者はこのB社の顧客企業に、こっそり「本当に朝一での納品が必要なんですか」と聞いてみた。すると、大多数の企業は、
「B社の営業マンが“朝一に納品します”というので、“お願いします”と答えていたが、別に朝一に持ってきてもらう必要はない」
とのことだった。つまるところ、「朝一での納品」が営業マンの決まり文句になっていただけなのである。
B社はこのマインドを改めるため、朝一での納品が不要な案件を獲得するとボーナスが増えるルールを導入した。結果、営業マンはこぞって「時間指定のない納品」を提案し、午後もトラックを使えるようになったことで、トラックの必要台数は半減した。ボーナスの増加分をはるかに上回るコスト削減効果を得られたのである。
「経営力」のある会社が勝つ

A社にしても、B社にしても、工場、営業、物流といった個別の現場に問題があったわけではない。工場や営業が協力することで物流コストを下げるといった「全体最適」の思考を欠いていたのである。
では、その全体最適は本来誰が担うべき役割だったのだろうか。それは紛れもなく経営者である。「物流コストはぬれたハンカチだ」という話を聞いたとき、経営者は自分の経営手腕が問われていることに気づくべきだったのだ。
最初に書いたように、今は物流コストインフレの時代である。このまま放置していると、物流コストの上昇により収益性を損なうか、あるいは、さらなる値上げを行わざるを得なくなる。それは企業としての競争力の低下にほかならない。
さればこそ、全社一丸となって生産・販売から物流までの全体最適を追求すべきなのだ。他社よりも一段踏み込んだ全体最適を実現できれば、コスト競争力を武器に戦えるようになる。物流コストインフレの今こそ、経営者の「経営力」が問われているのである。