物流コスト高騰! なんとバブル期比110%も、経営者の怠慢で荷主「ノーリアクション」の現実

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「物流コストインフレ」が企業に与える影響について考察。工場や営業が協力することで、物流コストを大幅削減できると筆者はいう。

物流部門以外の協力を得ることが重要

道路を走るトラック(画像:写真AC)
道路を走るトラック(画像:写真AC)

 この話を経営者にすると、

「今から物流担当に発破をかけます」
「物流コストを精査し直します」

などといわれることがある。至極まっとうな反応だが、それで物流コストが20%下がるかというと、そんなことはない。

 第一に、程度の差はあれ、現場レベルでは在庫の配置を換えたり、入出荷の手順を見直したり、配送ルートを組み替えたりといった改善策が実行されているからだ。中には、

「昔から同じ運送会社を使っている」
「協力会社に丸投げで効率性に問題があるのかどうかもわからない」

などという企業もあるが、委託先や業務内容を全面的に見直したところで、物流コストを10%以上削減できることは少ない。

 では、どうすれば物流コストを20%も削減できるのか。その秘訣(ひけつ)は、「物流部門以外の協力を得ること」にある。

工場との連携による物流コストの削減

機械メーカーA社の工場間輸送(画像:小野塚征志)
機械メーカーA社の工場間輸送(画像:小野塚征志)

 筆者がコスト構造改革を支援した機械メーカーのA社は、X工場で部品を加工し、Y工場で組み立てた上で、納品先に出荷していた。このX工場からY工場へのトラック輸送を1日3回行っていた。輸送の頻度が高ければ、その分だけ工場内にある在庫を減らせるからである。トヨタ式の「ジャスト・イン・タイム」を徹底した結果といよう。

 ただ、国内生産はピーク時よりも大きく減少しており、X工場からY工場に向かうトラックの積載率はいつも30%を下回っていた。つまり、積載率が30%にも満たないトラックを1日に3回も走らせていたのである。

 筆者の指摘を受けたA社は、1日1回に変更することでトラック輸送のコストを従前の半分以下に削減した。もちろん、輸送頻度を下げたことで工場内の在庫は増えたが、余剰スペースがあったため、追加の費用は生じなかった。

 こう書くと、読者の方々は

「なぜA社はこの問題に気づかなかったのか」

と疑問に思うかもしれない。A社の工場からすると、トラック輸送は物流部門で計上されるコストであり、在庫を増やさないことの方がより重要だったのだ。

 対して、物流部門は積載率が30%に満たないことを認識していたが、1日3回の輸送は工場からの指示であり、その範囲内で改善活動を行うしかないと決め込んでいた。そして、経営者は改善活動を徹底させたことで、効率化が進んだと錯覚していたのである。

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