北海道新幹線「遅延」は転機となるか? 19兆円の波及効果が示す道央経済の“新しい重心”
延伸遅延を補う巨大な波及効果

札幌延伸が先送りにされたことで、札幌駅周辺の開発は計画の練り直しを迫られている。地価の上昇や再開発に向かう熱量にも、どこか陰りが見え始めた。財務省が資材や人件費の高騰を受け、延伸工事の費用対効果が事業を中止すべき水準まで落ち込んだという指摘を公表したことは、事業そのものの存続に関わる重い警告といえる。
収益の姿を大きく変える存在として注目されるのが、千歳市のラピダスだ。2025年7月には次世代回路の試作に成功し、2026年5月11日には、試作品を分析して良品率を高める「解析センター」も正式に動き出した。経産省は同日、今年度中に最大6315億円の追加支援を行うと発表し、国からの援助は累計で2兆3540億円に達する。2027年度中には半導体の量産にこぎ着けたい考えだ。
北海道新産業創造機構によれば、関連産業まで含めた道内への波及効果は2036年度までの累計で最大18.8兆円にのぼる。これは工場の建設現場だけで終わる話ではない。米IBMやベルギーのimecといった世界の研究機関とのつながりを通じ、裾野の広い産業の土台が築かれようとしている。新幹線の投資回収が足踏みするなかで、これほどの巨額資本と知見が集まるプロジェクトは、経営を支える力強い代わりの原動力となる。
変化の兆しは、すでに千歳周辺の不動産需要として表れている。工事に関わる人々の宿泊が増え、地価も上がってきた。2025年4月にはオランダASML製の最先端設備の運び込みも終わり、量産に向けた歩みは速まっている。今はまだ建屋の整備といった目に見える需要が中心だが、長い目で見れば道央圏の人の流れを根底から変える力を持つはずだ。これまで広い路線網を守ることに手一杯だった経営資源を、高い価値を生む産業エリアへ振り向ける大きな節目となる。