「赤字1億円超…」 秋田のローカル線が続ける鉄印戦略――売上の2割を稼ぐ“もう一つの収益源”とは
秋田の由利高原鉄道が進める鉄印販売は、売上6242万円のうち商品販売が1243万円と2割を占める一方、赤字補填は補助金頼みの構図だ。通学定期半額化など独自策で利用増を狙う現場の実像を追う。
定期収入に匹敵する物販収益の規模

第三セクター鉄道の由利高原鉄道(秋田県由利本荘市)は2026年5月1日、「5月限定乗車記念」の鉄印の販売を始めた。
鉄印は、第三セクター鉄道等協議会に加盟する鉄道会社と関係会社が連携し、2020年7月10日に始まった取り組みである。鉄印帳を買い、各鉄道会社の窓口で乗車券を示し、記帳料(300円から)を払うと、各社の独自の印が受け取れる仕組みだ。いわゆる“乗り鉄”向けに、スタンプ集めを商品としてまとめたものといえる。
今回の5月限定乗車記念は、新緑や5月を思わせる草木に囲まれた「おばこ娘」を描いた、さわやかな図柄である。同社は4月1日にも
・令和8年度乗車記念
・4月限定乗車記念
・こいのぼり列車限定乗車記念
の鉄印を売り出しており、短い間に独自の鉄印を続けて出したかたちだ。この話題だけを見ると、マニア向けの商品の販売告知に見える。しかし同社には、鉄印をそうした商品として軽く扱えない事情がある。
同社が公式サイトで公表している第41期(2024年4月1日~2025年3月31日)の損益計算書によると、同期の売上高は6242万円だ。このうち、鉄印帳の記帳料などを含むとみられる運輸雑収は10万円に満たない。一方、鉄印帳本体を含む商品販売収入は1243万円で、売上全体の20%を占める。この額は、定期外収入2238万円、定期収入1415万円に次ぐ水準で、定期券の販売額に近い。
さらに、鉄印の購入者はすべて乗客であり、鉄印を目当てに別に乗車券を買っているとみれば、定期外収入の増加にも一定の割合で寄与しているといえる。